ただの想像
□鈍鬼
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私は、鬼とやらになっていたらしい。
『どうしたの皆。なんでそんな顔するの?』
「そんな、お前【 】か?…まさか自覚していないのか!?」
鬼になっているんだぞ。
そう言われて自分の姿を確認したことで、やっと私は事態を理解した。
『誰かを襲ってしまう前に、日に焼かれなければ。』
まだ理性はあるけれど、お腹は空いている。
大事にとっておいた思い出の品を持ち出して、見渡しの良いが丘に身を置いた。
できるかぎり痛みがないことを願いながら.もうすぐやって来る朝日を待つ。
輝く太陽が顔を覗かせる。
その景色は本当に綺麗で、眺めることができたことに感謝をしながら焼けつくような痛みに体を委ねていた。
…そう、それで全てが終わっていたはずだった。
『あ、れ。』
痛みが消え失せて、視界が開ける。
そこには、一人の男が立っていた。
ー
人なのか? と聞かれ。
『私は鬼ですが。』と素直に答えていた。
ハッとして、頭を下げる。
『あの、そろそろ身が焼かれると思うので!!』
敵意がないことを示そうとする私に、相手は戸惑った様子で尋ねてきた。
「気づいていないのか?」…と。
朝日を浴びた私は、普通の人間の姿に戻っていたのだ。
ー
血筋のせいなのだろうか。
日中は普通の人間に、夜には鬼の姿を現す、いわゆる半鬼と化していた。
姿が変わるたびに痛みはあるが、その代わりに強靭な肉体を得ることになる。
体が頑丈になっていたことにすら気づいていなかった私に、彼は呆気にとられていたようだった。
私は思わず、苦笑いを浮かべる。
『昔から、鈍いとは言われていました。』
そうだろうなぁ、と呟いて。
彼は私の髪を愛でるように撫でる。
「…鈍すぎる。」
その言葉の真意すらも、その時の私にはわからなかった。
ー彼女が朝日に身を委ねる姿は、見惚れるほど儚げで。
ーーーーーーー
術やら毒やら呪いやらの効き目が鈍い血筋が濃い子。
抗体が強いというべきか。
鬼化の良いとこどりだけれど、変化する際はめちゃくちゃ痛い。
一応、鬼化はある程度なら押さえられるので、隠せる限りは隠していく。
ほとんど普通の人間なので退治しようにも難しい処遇。
血筋による超奇跡なので、他の鬼を見逃す理由になれずにいる。