小説。

□もう、本当に。
1ページ/1ページ



「好き、伊出さん」

どうしてお前はそんなに、嬉しそうに俺を好きだと言える?

「好きですよ、伊出さん」

あぁ、幸せそうな顔で。

「ね、好き」

お前は。



「あれ、あれ?何で泣くんですか〜?」
そう言われて初めて自分が泣いていることに気付く。
気付いたら、意識したら、何故か止まらなくなって。
ボロボロと次々に流れ出す。
でも何故だろう、嫌では無い、苦しくは無い、もやもやしていない。
温かくて、清々しくて。
「・・・ふふ」
「あれ、笑った」
キョトンとしている松田に抱きついて、その肩に顎を乗せる。
今度は笑顔が止まらない。
「不思議だなぁ」
松田の肩が小さく上下して、笑っていると分かった。


泣きながら笑うなんて、こんなの初めてだ。


「松田」
「はい」
「・・・好きだ」
嬉し泣きだ、これは。
愛しい人間が、同じように自分を愛しいと思ってくれる喜び。

どうして出会えたのかなんて考えだしたらキリが無いけれど。
あぁ、本当に。
出会えて良かった。


END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ