小説。
□もう、本当に。
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「好き、伊出さん」
どうしてお前はそんなに、嬉しそうに俺を好きだと言える?
「好きですよ、伊出さん」
あぁ、幸せそうな顔で。
「ね、好き」
お前は。
「あれ、あれ?何で泣くんですか〜?」
そう言われて初めて自分が泣いていることに気付く。
気付いたら、意識したら、何故か止まらなくなって。
ボロボロと次々に流れ出す。
でも何故だろう、嫌では無い、苦しくは無い、もやもやしていない。
温かくて、清々しくて。
「・・・ふふ」
「あれ、笑った」
キョトンとしている松田に抱きついて、その肩に顎を乗せる。
今度は笑顔が止まらない。
「不思議だなぁ」
松田の肩が小さく上下して、笑っていると分かった。
泣きながら笑うなんて、こんなの初めてだ。
「松田」
「はい」
「・・・好きだ」
嬉し泣きだ、これは。
愛しい人間が、同じように自分を愛しいと思ってくれる喜び。
どうして出会えたのかなんて考えだしたらキリが無いけれど。
あぁ、本当に。
出会えて良かった。
END