小説。

□大人。
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キラ捜査が終わって、松田は少し大人びた気がする。

キラ捜査を始めた頃は、まだいかにも新人で荒削りな、子供っぽさが抜けていない印象しか無かった。

なのに、今はどうだ。

いつの間にか、言葉の返し方も上手くなったし、動作にも落ち着きがでてきた。

そして、何よりも。

表情。

ふと見せる、大人の微笑。

それを初めて見た時、胸を鷲掴みにされるような感覚に陥った。

今も、そうだ。

目が合うたびに微笑みかけてくるから、その度に息苦しくなる。

あぁ、なんなんだ、これは。


「松田」
「はい?」
「お前のせいで、仕事に身が入らない」
「・・・ぇ、え?それって、どういう、」
「・・・さぁな」

顔を背けて立ちあがる。

瞬間、松田が俺の腕を掴んだ。

掴まれた所から熱くなる。

「逃げないで」

その真剣な視線に、捕われて。

あぁ、もう・・・。

勝手に、口が動く。


「お前は、どんどん大人びていく」
「・・・」
「そんなお前の仕草一つ一つに、」
「・・・」
「・・・苦しくなるんだ・・・」


何を、言ってるんだ、俺は・・・。


しばらく黙っていた松田が、柔らかい表情で口を開いた。



「僕に、惹かれてるの?・・・伊出さん」




「ぁ・・・」


やっと、もやもやが晴れた。



END

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