a lily
□A faint love
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やっぱり転校生というものは人気で、皆から猛アタックを受けていた。
松海碧は自己紹介されるたび目を白黒させて〇〇さんね、よろしくと繰り返していた。
僕は水道に手を洗いに行った。蛇口をひねり、水がシンクを虚しく打っているのを見てぼんやりした。
スカートや足に水が撥ねたような気がした。いつもだったらぎゃっと言って飛び退いているけど、なんだか今日はそんな気にもならなかった。
そんな僕を見ていたのか、金神ってやっぱ不思議だななんて聞こえてきたので蛇口を更にひねって水を飛び散らせてやった。
教室に戻ろうとして歩きだした。そうしたら教室から数人の娘達の真ん中で楽しそうに話す松海碧が来た。
あまりにも不意討ちで、僕はびくっと一瞬固まったが、気付かれないように歩いた。
「彼氏にするなら誰がいい?顔だけなら無神坂とか?」
「あ…いや、わからないなー」
松海碧はクラスメイトに割と込み入った話をされて、たははと乗り切ろうとしていた。
笑うと頬に細い子によく出るしわができていた。きっとすごく細いんだろう。
後ろを振り向いて確認すると、セーラー服に当たる体のラインから、折れそうな程華奢だということが分かった。