a lily
□A faint love
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ちゃんとご飯たべてるのかな。
何故か頭に恰幅の良い母と、骨のような叔母が浮かんだ。
とぼとぼと席に着く。
膝に手を置くとスカートがさっきの水飛沫で濡れてじめっとしていた。
今日はいつもの教室は教室なんだけど、雰囲気が黄色っぽく明るいような気がした。
そのままぼーっとしてると、いつのまにか数学の授業が始まっていて、ハッとして前方の席を見ると、松海碧は真剣にノートをとっていた。
僕はそそくさとノートと教科書を開き、バレない程度に松海碧の事をぼんやり見つめていた。
すると左からすっと手が伸びてきた。
ぎょっとして松海碧の左隣を見やると、飯島梨茶子だった。
彼女の腕は松海碧の肩をトントンと叩き、「消しゴム貸して」と、言った。
しんと静まり返った教室の中だったから後ろの方の私でも、小声で言ったであろうその声を聞き取ることができた。
松海碧は優しく微笑み、「うん、いいよ。」と、言ってカバーも何も無い真っ白な消しゴムを飯島梨茶子に握らせた。