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□その恋一方通行につき挫折注意!
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俺、松村彼方は只今ストーカー被害にあっている。
毎日毎日誰かの視線を感じるし、疲れて家に帰ると郵便ポストに大量の薔薇と気味の悪い手紙が入っている。夜9時には必ずかかってくる無言電話。
それだけで死にそうなのに
俺は今痴漢にあっている。
それも♂、に。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
夜の6時、電車の中は疲れた顔のサラリーマンや音楽を聴いている人、携帯をいじっている人でぎゅうぎゅう詰めになっている。
学校で部活をしていない俺は家に帰るためにこの電車に乗っただけなのに。
「うっ…ゃ…めろ……ゃあ……」
「きもちいー?」
俺の尻を揉みながらそう聞いてくるこの男。
窓越しに見た顔はモデルかと思う程顔が整っていて、たれ目でフェロモン垂れ流しの顔。
つまり超のつく美形だ。
そんなイケメンに俺は今痴漢されている。
皆一同に自分を人の波から守ることに必死でこちらに気がついていない。
「やめっ…ろ!……この…ド変態ヤロッ…」
「そんなこと言ってぇ……誘ってるの?」
男はそう言うと舌舐めずりをした。
「気持ちい〜彼方チャンのお尻」
意味がわからん!
そしてなぜ俺の名前を知っている!?
「もっ……ふぇっ……やだ……」
例えイケメンであっても、男に痴漢されているという現実に耐えきれなくなった俺は不覚にも泣いてしまった。
「彼方チャンの泣いてる顔好きだけど〜、いやいや泣かせるのは好きじゃないから今日はこれでバイバイね」
男がそう言うのと同時に電車は俺が降りる駅に着いた。
「またね〜彼方チャン」
流れ出る人混みの中で男を探したけれど、男の姿はもう消えていた。