短編小説

□異国の歌にはご注意を(仮)
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ふと口ずさむ

昔にチラと聴いただけで、歌詞も、意味も知らない異国の唄

それでも、何故か耳に残るメロディを思い出して




「珍しいな」
「…何が」

当たり前のように人の家のソファーに寝転がって漫画なんか読んでる奴に軽くイライラした口調の返事を返す。

ソファーから一番近い場所にあるテーブルの上には愛用のヘッドホンと数冊の漫画

無造作に散らばる漫画の数々にムトウはそれをひっ掴んで資源ゴミに出したい衝動をなんとか抑えた。

「歌。鼻唄なんて滅多に聞かねぇのに」

なにか良い事でもあったか?と問われてもただ口ずさんでみただけなのだが

「別に。なんとなく」
「へぇ…。マイナーな曲だからちょっとびっくりしたぜ」
「知ってんの?これ」
「おぅ。何だ、知らねぇの?」
「…昔ちょっと聴いた事があるくらいだよ」
「んじゃ、歌詞とか意味は?」

ニヤリと口をつり上げ笑い、持っていた漫画を脇に置き体を起こした。
ギシリとソファが軋む音に嫌な予感を感じずにはいられなかった。


「…知らねぇ」


そう答えるとやっぱりな、と予想されていたような答えにムトウの苛立ちは一層のものとなった。
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