短編小説
□居場所
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仕事を終え、深夜━…
一人の男がアパートの階段を登る
暗くてよく見えないが、それは夜のせいだけではなく、自然に闇に溶けるような服装のせい
一つの扉の前で足を止め、そこのチャイムを鳴らした。
目を擦り出てきたのは正反対の明るいオレンジの髪をした男
「ぁ…KKさん…」
「ワリィ…寝てたよな」
寝起き直後のほわんとした表情で『入って下さい』と促され、部屋の扉を閉めた。
「どうしたんですか?こんな遅くに…」
「ん〜、ちょっとな」
曖昧に答え『会いたくなったから』と冗談めかして言えば『僕の都合は考えてくれないんですか?』とふてくされた表情を作りながら、それでもまた嬉しそうに微笑む。
「…何か飲みます?」
「ん、いや…あの猫はどうした?」
「ししゃもならもぅ寝てます。こんな時間ですよ?」
「それもそうか」
いつもならばサトウの傍にいる仔猫も深夜ならば寝ていて当然
「サトウ……」
背後からふわりと抱きつき首筋に顔を埋める
「KKさん?」
不思議そうに振り返ったサトウの体を反転させ正面から再び抱き締めた。
柔らかい髪があたり、サトウの温もりと香りが腕の中におさまる。
口づけを額に、頬に、首筋にとゆっくり落とし、そのままくすぐったいとクスクス笑うサトウをソファーに押し倒した。
「…どうかしました?」
優しく声をかけられ、抱き締める腕に力を込めた。
「ん…ちょっとな…」
「…そうですか」
サトウの手がまるで子供にするかのように優しくKKの頭を撫でる。
何も聞かずに、ただ黙って
流れていく、優しい時間
「やっぱ…お前といると良いよなぁ…」
「なんですかソレ」
またクスクスとサトウが笑った。