短編小説
□特別な日常
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「サトウさん」
「なぁに?リュータ君」
名前を呼ぶと、飼い猫のししゃもと戯れていた彼が笑顔で振り返る
日曜の昼間
特別な日でもなくて、ただなんて事ない普通の日
バイトがないという理由で朝から彼の部屋にいきなりお邪魔したというのに嫌な顔ひとつしないで笑顔で中に入れてくれた彼
「…なんでもありません」
振り返ってくれたのが嬉しくて微笑んでそう言うと『なぁに?』ともう一度聞きながら近付いてきた。
下から俺の顔を覗き込んでくる、その表情とか仕草とか
なんかもう全部が可愛く思えて
「っゎ……」
「何でもないんです…しいて言うなら…何か…幸せだな、って思って…」
随分恥ずかしい事を言ってると、自分でも自覚はある
いまいち格好つかないけど、多分俺の顔は今真っ赤だと思うし
でもそれより赤いであろう腕の中の彼の顔
「うん…僕も今すっごく幸せ…」
うつむきがちに言うその顔は耳まで紅い
少し勇気を出してギュッとその体を抱き締め、額にキスをした。
「サトウさん、顔真っ赤ですよ」
「リュ、リュータ君だって…」
二人で顔を見会わせてクスッと笑う
何て事ない日常
でも、この人がいれば
全てが特別
終わり