短編小説
□夕暮れメロディー
1ページ/2ページ
夕暮れの公園に音が響く
切なく、何処か物悲しいメロディー
「ねぇ、どうして貴方はいつも独りなの?」
「…父さんも母さんも、いなくなったから…」
「…そう」
「…」
「私と一緒ね」
「え…?」
「私ね、お姉ちゃんがいるの。何処にいるか分からないけど」
少し空を見上げると、夕焼けが目に飛び込んできた。
辺りの遊具もオレンジ色に染められている。
人気のない公園のブランコが、風に揺れてキィと鳴った。
「届くと、いいのにね」
ロッテはおもむろに肩に掛けたギターを手に取り、強く掻き鳴らした。
誰かに伝わればいい
遠くまで響いて、届けて
大切な人のところまで
「上手ですね」
「まだ始めたばっかりよ」
「遠くまで響きそうです」
そうかしら、とロッテは曖昧に肩を竦めた。
「もう帰らなきゃ。おじ様に怒られちゃう」
「そう…さようなら」
「さよなら」
静かになった公園に、響き渡るのはアコーディオン
空気を振るわせるように
遠く、響く
終わり