拍手お礼SS

□with you
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それを見つけたのは、本当に偶然だった。


「…?」


めったに入らない、一番奥の部屋。
乱雑に散らかった倉庫のようなそこで、探していた古いファイルを発見したわたしは、机の下に置かれている箱を見つけた。

中世の海賊が見つけたら喜びそうな、まさに宝石がたくさん入っていそうなキラキラした宝箱だった。


「なんだろう………これ…!」



誰の?竜崎の?

何が入っているんだろう。
重要な書類とか?いや、甘いモノ好きの彼のことだ、秘蔵のお菓子でも隠してるんじゃ…。
それとも、ままま、まさか本当に宝…!?竜崎お金持ちだしね、ありえるよね!!

でも、案外単なる段ボールがわりに使っているだけなのかもしれない。中はゴミだらけだったりして。


「……………見たい」


わたしは、ゆっくりと辺りを見回す。
一人でやってきたのだから、もちろんここには、わたししかいない。
当たり前の事実にホッとして、おそるおそる宝箱に手を伸ばす。

大きな鍵がついていたけれど、蓋は簡単に開いた。


「…?」


中は、すかすかだった。

(空っぽ?)

あれだけ期待してしまっていたために肩透かしをくらって箱を覗き込む。

…中に、何か入っていた。


(…………写真。)


それは、古いポラロイドで映された写真。

たった数枚だけが、大きな宝箱の中に入っていた。


コンコン。

突然背後から聞こえて来た音に振り返ると、竜崎が立っていた。


「遅いので来てみれば…」

何をしているんですか、とわたしに近付く。その声は怒っていなかった。


「、これ」

「ああ、勝手に撮ってしまってすみません」


でも、宝物です。
言ってから嬉しそうに笑った。

「これって、わたしの足の爪?」

「はい。お気に入りの色が手に入ったと喜んでいた時に撮りました」

「こっちは…竜崎の髪の毛?」

「はい。寝癖が可愛いと褒めてくれたので、はねた部分だけを」

「これは………、」

「ああ、私はこれが一番好きです」


捩れた、真白いシーツの皺。

わたしから写真を取り上げて、目を細める竜崎に、なんだか胸の真ん中が痛んだ。



この写真の中に、竜崎はもちろん、わたしも顔を出していない。この足の爪がわたしのものかどうかなんて、竜崎にしかわからない。こんなものを、大切に、大切に宝箱に入れて隠している竜崎が、すごく滑稽だった。でもそれ以上に、とても愛しかった。


「泣いているんですか…?」

驚いた。
何故涙が流れるのかわからなかった。


「…竜崎は、幸せ?」


口をついて出た問いに、少しだけ困ったように眉を寄せて竜崎は笑った。


(たぶん、…あなたが居れば。)



その言葉を浴びて、わたしは見えない光に祈る。

(かみさま、神様どうか、)



捧げた誓いは雫になって、頬に零れた。





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