拍手お礼SS
□今年の終わりに
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†今年の終わりに(L)†
深夜のコンビニ。
年末になるとどこの店も開いていないが、ここは年中無休でしかも24時間営業なので、有り難い。
「いらっしゃいませー」
迷わずデザートのコーナーへ向かう。
それにしてももう少し品数が多くならないものかと思いながらも、生クリームプリンと苺タルトを見比べていると、背中に軽い衝撃を感じた。
「きゃ!」
「…?」
直後にドサドサと何かがなだれ落ちる音がして振り向くと、
そこには床に散らばったたくさんのカップラーメンと慌てて拾う女性の姿。
「すみません」
「私の方こそ前見てなくて…ああ、どうもありがとう」
「…いえ」
一人分にしては多すぎるそれらを、一緒に広い集め手渡す。
「本当ごめんね。助かりました。…あはは、すごい数でしょ?」
「はい」
しかも、同じものばかり。
「あ、私一人で食べるんじゃないですよ!親戚が集まってるんで皆の分を、買いに来たの」
「蕎麦が好きなんですね」
竜崎が何気なくそう言うと、目の前の彼女は目を丸くした。
「あなたは食べないの?」
「何をですか」
「年越しそば…」
「…年越しそば?」
「食べたことないの!?」
「…はい」
「そうなんだー」
「おかしいですか」
「うちは毎年そうしてるよ。……でも言われてみれば、なんで毎年食べてるんだろう?」
うーんとその場で考え出した彼女は、あ!と閃いたように口を開く。
「願掛けみたいなものかな」
「…願掛け」
「そう!来年もいいことありますようにっていう」
「…何故そばじゃなくてはいけないんですか」
「それはホラ、あれ。そばって美味しいからよ!」
「…そうですか」
「えっ何いまの間!?」
「いえ。良いことを教えていただきました」
「よかった!じゃあこれあげるよ。ハイ」
「いえ。私はいいです」
「なんで?せっかくだから今年は食べてみなよ、年越しそば!」
「…貴女の分が無くなってしまいます」
「いいよ、こんなにあるんだもん。誰かに分けてもらうし。だから、はいっ」
「…はあ。どうも」
半ば強引に押し付けられてしぶしぶ受け取ると、彼女は満足そうに笑う。
「良いお年を!」
そう言って颯爽と店を出て行った。
…良いお年を。
天真爛漫なその姿に微笑んでから、生クリームプリンを片手にレジへ向かった。
「竜崎がカップラーメン? しかも何で蕎麦…」
「知らないんですか月くん」
「? 何を」
『…―来年も良いことがありますようにって。』
「…やっぱりいいです」
「何だよ竜崎」
「もったいないので教えてあげません」
ずぞぞぞ、と麺をすすると、どこかで最後の除夜の鐘が聞こえた気がした。
もう年末ってわけでクリスマスのとき同様、またまた期間限定拍手を差し替えてみました★
今年は11月に人生初の夢サイトを立ち上げ、皆様にお会いすることができて、本当に幸せでしたvv
拙いサイトへ立ち寄ってくださる全ての方へ感謝の気持ちを込めて。
(この拍手は31日までの限定公開です)
管理人・ひなな