旧版権小説
□遠い場所。
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夢を見た。
誰かが近づいてくる夢。
苦しくて、痛くて。
どうしようもなかったその時に。
目の前に誰かが居た気がした。
黒くて、とても綺麗な人。
夢
「ん、……」
突然目が覚めた。
暫くは夢と現実との区別がつかずに、ボーっとしていたが、暫くして自分が置かれていた状況を思い出す。
凄まじい熱気を放ちながら燃える自分の家。
誰のものかも分からないような悲痛な呻きと叫び。
思い出しただけで吐き気が襲ってきた。
あの後最後の力でどこか安全なところに行こうとして気を失った。
「やぁ、やっと起きたの」
突然発せられた言葉に、初めて自分以外の人間が居ることに気がついた。
黒髪、漆黒の瞳。
どこもかしこも黒くて、それでいてとても綺麗な顔立ちをしていた。
「貴方が、助けてくれたんですか…?」
「うん、……まあね」
それが何か?
そんなような雰囲気で目の前に腰掛けている人物はいった。
日本語、ということは日本なのだろうか。
「君、誰かに追われてたの?」
凄い疲れてたよ、君。
その言葉にギョッとする。
「えっ…」
いえるわけがなかった。
自分が、
”マフィア”であることを。
しかも命を狙われている。
「それとこれ。ポケットに入ってた」
言葉に詰まっていると、目の前の人物(でも歳は同じくらい…、かな?)が何かを差し出した。
「あっ…!」
綱吉はそれを知っていた。
幾つかの銀製の指輪。
似ているが全てどこかがちがう。
自分がそれを守らなければならない。
ボンゴレの、そして俺の、大事な大事なもの。
「……まぁ、さ。話したくないなら別にいいけど。」
「はぁ…」
「君、その様子だと帰るところなんてないんだろ?」
深くは追求してこないぶんその言動は鋭かった。
確かに俺に帰るところなんてない。
逃げてきたのだから。
言葉を濁す俺を見て、彼は笑った。
「だったら助けてやってもいいよ?」
「ほ、本当ですか!?」 願ってもない一言に思わず食いついてしまう。
「うん、でも何もせずに住めると思わないでね?」
「……!」
人生そんなにすべたが上手くいくことはない。
分かっていたさ。
しかし理解しているのと実感するのではわけが違う。
綱吉は最後に付け足された不穏一言に、ただ笑うしかなかった。
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あ、続いた