旧版権小説
□急速に変化。
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その姿をこの目で見てみたいと思ってしまった。
覚醒
「…く、う」
突然、唐突に意識は浮上した。
体はどこもかしこも痛くて、吐き気がして酷い頭痛がした。
でも、
生きている。
「ここは…」
「病院だ、馬鹿が。三日も意識不明の重体だったんだぞ」
窓から差し込んだ光に見知った顔が明るく照らされていた。
ずっと傍にいたのか、その顔は疲れているように見えた。
彼のことだから顔にはださないものの、真っ先に駆けつけたに違いない。
「ごめん、心配掛けた」
「ホント、情けねえボスだ」
溜息をついた男は、しかしそれはもう昔から知っているとでもいうように、ただ黙って見下ろしてくるだけだった。
その表情には信頼と、少しの安堵が見えた。
「死なないって分かってたんだろ?」
「うん、まあね」
嘘だった。
あの時俺の超直感は"死"を予感していた。
死ぬだろう、とも思っていた。
全てが終わる前に想いを一方的に告げ、答えを聞かぬままに。
それでもいいと思った。
あの人を一生、この想いで縛れるのなら、と。
長い夢を見た。
あの人が泣いている夢。
血に染まる空間で独り立ち尽くして、声も出さずに。
あの人が泣くところなんて想像すらできないと思っていたけど、俺は――。