旧版権小説
□悲夜聖母
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悲夜聖母
どさり。
ボンゴレの資金を散々つぎ込んだ高級ソファが音をたてて軋んだ。
いつもなら動きづらい黒スーツなど、この部屋に帰ってくればすぐ脱ぎ捨ててしまうのだが今はそんな気分も気力もわいてくることはない。
今日、部下が一人。
撃たれて死んだ。
ただ単に死んだだけならよかったが、その人物は”綱吉を守ってしんだ”のである。
綱吉はボンゴレの10代目ボス、ドン・ボンゴレだ。
ファミリーの中で一番優先されるのは当たり前。
少なくとも綱吉以外の人間はそう認識していた。
死んだことの原因全てが自分の落ち度であるとは思わない。
しかし、必ずどこかに落ち度があったはずなのだ。
その落ち度が重大であってもそうでなくても、もう少しなにかしていれば、彼は死なずに済んだのではないか?
その疑問が頭を駆け巡って離れない。
誰が責めたわけでもない。
世間の裏の闇に身をおく以上、危険はいつもつき物で、いつ死ぬかも分からないのがマフィアというものだ。
…もちろん、”失う”ことだってあるだろう。
じゃぁ、何だ。
マフィアにならなければ良かったのか。
いや、何があったにしろ自分で選んだんだ。
放棄することは許されないし、して良いとも思えない。
はぁ、
自己嫌悪で今にも潰れそうだ。
行き場のない思いが渦巻いて、どこかにぶちまけてしまいたい衝動に駆られる。
『悪循環』とはこういうことを言うのだろう。