旧版権小説

□遠い場所。
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うめく声と叫ぶ声が聞こえた。
頬を掠める風が熱い。
巨大な屋敷が燃えているのだ。
燃え盛る火は美しかった建物を無常に飲み込んでいく。
鉛のように足が重かった。
助けを呼びたいのに、口から声が発せられることはない。


そんな…


まさか此処までやってくるなんて。
すぐそこに危険が迫っている。


逃げなければ。
今すぐ遠いところへ。


















それは全くの偶然だった。




風紀の仕事を終えた雲雀は、薄暗くなった道を歩いていた。
色々な事情が重なり、いつもより少し帰りが遅くなってしまったので急ぎ足で歩いていたのだが、左右を流れていく景色の中に何か違和感を感じて足を止めたのだ。

気のせいだろうとは思ったが、気になることを残していくと苛立ちが残るだけなので一応、ということで目立たない小さな小道に足を進めた。

灯りもなく、暗い所為で殆ど視界は真っ黒で、やはり何かの間違いだろうと、元来た道を戻ろうとした時だった。
もぞもぞと何かが動いた。

反射的に防衛の動作が働いたが、暫くして特に警戒の必要性が何ことに気付いた。

何故ならその物体が人間で、しかも倒れているということがわかったからだ。



「…ねぇ…死んでるの、」



いや、動いていたのだから死んではいないはず。
じゃあいったい何故ここに倒れているんだ。
疑問に思って顔をのぞきこむと、以外にもその人物は自分と同じくらいの少年だった。
しかも何故かスーツを着ている。
かなり衰弱しているようだ。


「へぇ…」


覗き込んだ瞬間、
たった一瞬だけ垣間見えた瞳の色。
…思い出しただけで鳥肌が立つ。


面白いものを見つけた。


雲雀は目を細めて笑った。




本当に突発物。 
管理人にも予測不能
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