夏の奇跡

□10.ハッピーバースデイ
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「ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデートゥーユー
ハッピーバースデーディア おばあちゃん
ハッピーバースデートゥーユー」


浴衣姿にウクレレを持った夏希、パーティーグッズを付けた万作、万助、翔太、理一、聖美、真悟、祐平。
祐平の隣で歌うのは真緒。
星のステッキを持った理香に、太鼓を持った太助。
番傘を持っているのは克彦と邦彦。
その隣で笑うのは頼彦。
花を持った万里子に、後ろで笑みを浮かべるのは直美。
子供を抱いた由美と奈々、そしてその横で微笑むのは典子。
健二は片方の鼻にティッシュを詰め、佳主馬の肩に手をおいていた。
佳主馬は中学の制服に片手はポケットに突っ込んでいる。
もう片方は栄から貰った青色の着物を着た美羽と手を繋いでいた。
みんなの笑顔の先には、朝顔の花に囲まれた、栄の写真があった。


「お誕生日おめでとー」


夏希の言葉を先頭に、次々とみんなが口にした。










万助はイカや玉ねぎの串焼きにし、万助はイカ焼きを食べながら、不思議そうに家を見上げる知り合いの方たちといた。
万里子が来てくれた方々にお辞儀しつつ苦笑を浮かべ、夏希はやっと着くことが出来た両親と再会を果たした。
優勝旗を持って栄が死んだことに泣きじゃくる了平に、由美がイカ焼きを差し出す。
そんな姿を見ながら、美羽は聖美の側に立っていた。

佳主馬がそっと、聖美の大きくなったお腹に触れる。
が、


「わっ、動いた。
キモッ…」


動いたお腹にバッと手を引っ込め、聖美を見て呟いた。
美羽はそんな佳主馬に苦笑を浮かべ、聖美は微笑みを向けた。


「ありがとうって言ってるのよ」

「わあああああ!」


突然背後から頭を乱暴に撫でられ、佳主馬が悲鳴をあげた。
びっくりして振り返れば、そこには見慣れた男性の姿。


「父さん」

「よくやった」


父の言葉に、佳主馬は少し微笑んだ。
そして、キッと美羽を睨む。


「いつまで笑ってるんだよ、美羽」

『ご、ごめ…っ、あははは』


佳主馬のびびり具合がツボに入ったらしい。
美羽は涙を浮かべながら笑った。

夏希は楽しそうに笑う美羽と不機嫌そうな佳主馬を見て微笑む健二を見て、頬を赤くした。


《見ましたよ、侘助さんのニュース。
名乗り出たんですね》


佐久間はそう言いながら、ニュースに目を向けた。
そこには、侘助はラブマシーンを開発したに過ぎず、OZに解き放った張本人は国防総省である。
今回の事件による死傷者は幸いにも報告されていないが、軍事上の実験に世界中の人々を巻き込んだ責任は、重いと言わざるをえない、とあった。
これなら、侘助が批判を受けることは少ないだろう。


《あ、健二に言っといてください。
当分帰ってくんなって》


佐久間の言葉に夏希はケータイを耳から離し、イカ焼きを食べる健二を振り返った。


「帰ってこなくて良いって」

「いや、帰りますよ」








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