夏の奇跡
□09.最後の危機
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「あ…」
画面を見つめ、固まる夏希。
その額には汗が浮かんでいる。
「と……
止まった」
そこには、00:13:59:17という数字で動きを止めたワールドクロックがあった。
その瞬間、その場は歓喜に包まれた。
みんな両手をあげて喜び、万里子と理香は抱き合う。
佳主馬は表情すら変えなかったものの、内心ではホッと息をついていた。
「先輩」
画面を見て呆然とする夏希に、健二が声をかけた。
すると、ようやく実感が沸いたらしい夏希は涙を浮かべた。
「健二君…
私…私…
やったぁー!」
ケータイを放り投げて、そのまま健二に抱き付いた夏希。
咄嗟のことで支えきれず、健二は夏希と共に後ろに倒れた。
「ちょ…先輩」
嬉しそうな夏希を見て、健二は頬を赤くしながら笑った。
夏希が笑ってくれるなら、良しとしよう。
すると、突然太助が画面を見て目を見開いた。
「待って、何かおかしい」
それに画面を見れば、ワールドクロックが再び動き出していた。
「カウントダウンが止まらない」
「ええっ!?」
全員が目を見開き、再度画面を確認する。
だが、そこには動きを停止していないワールドクロックがあった。
《そんな…
世界中のワールドクロックは止まってるのに》
「ここだけ!?」
佐久間の言葉に、健二は慌てた。
すると、ハヤテが空を睨みつけながら吠えていた。
画面の中で小さなウィンドウが開いた。
そこには空から見下ろした家が映し出されている。
その映像が拡大化され、そしてそこには空に向かって吠えるハヤテが映っていた。
庭で吠えるハヤテを見つめ、全員が驚きの声を上げた。
「ここにあらわしを落とす気?」
「それ以外の何がある」
ワールドクロックから延びっていたウィンドウは、あらわしと陣内家だけ。
あらわしと陣内家のウィンドウに、鍵を持った偽ケンジ姿のラブマシーンがシシシッと笑った。
「ふざけんなあの野郎!」
翔太が拳を握って声を荒げた。
太助も拳を握り、由美はメガホンを持って声を張り上げる。
「まだ解体終わらないの?」
「やってる!」
直美の焦った声に、侘助が荒々しく答えた。
額に汗が浮かぶ。
侘助も美羽も、手が麻痺しそうになりながらもスピードを上げた。
《10分を切った》
佐久間の焦った声に、理一が立ち上がった。
「もう任意のコース変更は無理だ」
「冷静に。
まずは退避。
近所の人達にも大至急知らせて。
どんな被害が出るか分からん。
行くぞ」
頼彦の言葉に、全員が慌てた。
頼彦は真緒を抱き上げる。
すると真緒が不安そうな顔で頼彦を見上げた。
「お家吹っ飛んじゃうの?」
「吹っ飛ぶくらいですめばいいけど」
真悟を抱き上げた典子に真緒を頼み、頼彦はケータイを手にした。
邦彦は加奈を奈々に預け、由美は恭平を腕に、祐平を背中に背負った。
summer