夏の奇跡

□08.花札こいこい
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暴走を続けるラブマシーン。
すると、場面が切り替わり、そこは突然カジノステージになった。
それに驚いていると、一人の声が静かに響いた。


「あなた、そんなにアカウントがほしいの?」


その声に振り返れば、そこには袖を捲った、袴姿のアバターがいた。
セミロングの黒髪に、尖った耳。
どことなく小鹿を連想させる。

ナツキはキッと強い眼差しでラブマシーンを見据えた。


「いいわ。
私のをあげる。
ただし、私との勝負に勝ったらね」


ナツキの言葉と同時に、「HANAFUDA KOIKOI」と描かれたカードが点滅する。
すると、アナウンスと同時にステージが恐竜などが描かれた場所へと変わった。


「賭け金は…
私の家族!」


その言葉と共に、夏希の後ろには陣内家のアバター達が勢揃いしていた。


「お互いのアカウントを賭けて勝負よ!」


夏希を中心に、全員がケータイやゲームを構える。


「みんなのアカウント、私が預かったわよ」


それを聞きながら、侘助はスーパーコンピューターに自身のノートパソコンを繋ぎ、ラブマシーンの解体作業にかかっていた。
その隣に座る美羽も、自身のノートパソコンをスーパーコンピューターに繋ぎ、侘助の補助を勤める。

解体作業を行いながら、侘助が小さく笑った。


「花札とは、うちらしい戦い方じゃないか」

『そうだね、おじさん』

「侘助さん、美羽ちゃん、同時平行で解体作業お願いします」


健二の言葉に、美羽が作業をしながら頷いた。
パソコンの扱いに長けていてよかった、と美羽は心の中で思った。


「しかし、勝負に乗ってくるか。
佐久間君含めて21人。
いくらなんでも、こんなチャチな賭け金じゃ…」

「黙ってろ。
どんなにチャチでも俺達の命だ」


太助の不安気な声に、万助が渇を入れた。

そう、今じゃ現実世界とOZの世界の権限は等しい。
アバターはつまり、現実世界のその人自身を指し示す。
命と同じだ。
それに、あらわしを墜落させようとしている今、この賭けに負ければそれこそ本当に命が危ない。


「勝負しろ!」


翔太の声に、全員が「勝負しろ」と声を荒げた。
それに、侘助と佳主馬が目を細めた。


「乗ってくる。
必ず」

「間違いない」


すると、ラブマシーンがゲームに参加すると表情された。

ゲーム好きのラブマシーンが、勝負に乗らないわけがない。
それがどんなに少ない賭け金だとしても、ゲームが好きなラブマシーンは必ず乗ってくるのだ。


「勝て夏希!
世界の運命はお前にかかっている!」


万助の言葉に、夏希はただラブマシーンを見つめた。


《このステージでは、カジノルールが適用されます。
こいこい一回ごとに得点が倍になります。
最後にあがったプレーヤーが、得点の総取りになります。
柳にツバメ、ショウブにカス。
親が夏希さんに決定しました》


互いの前に、花札が並んだ。


《それでは、ゲーム開始です》









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