夏の奇跡

□06.合戦
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ポーンという時計の音が響き渡る。
その音と共に、キング・カズマが顔を上げた。

OZの闘技場に立つキング・カズマは、警戒するように辺りを見渡した。
サクマやキング・カズマから少し離れた位置に待機するミウも、辺りを見渡す。

すると、何かを感じ取ったキング・カズマが上に視線を向けたその瞬間、頭上からラブマシーンが突撃してきた。
床にぶつかり、衝撃音が響く。
砂煙が立ち込め、その中を振り切るように、真っ直ぐキング・カズマに拳を突き出してきたラブマシーン。
キング・カズマは冷静に、ラブマシーンの攻撃を避ける。


「来やがった」


サクマが後方にいたケンジ、リイチ、タスケ、ミウの元まで下がる。
ミウはサクマが下がったのを確認してから刀を取り出し、四人を守るように前に出た。
何かあった時、すぐに対処できるようにだ。

キング・カズマはラブマシーンの素早い攻撃を紙一重でかわしていく。
その様子を、遠くから多くのアバターが見ていた。

ラブマシーンがキング・カズマに蹴りを入れる。
それを避けたと同時に床に手をつき、キング・カズマはラブマシーンに回し蹴りを食らわせた。
一度離れたラブマシーンは勢いをつけて飛び蹴りを放つ。
今度はそれをバックステップで避けると、そのままラブマシーンの腹に蹴りを入れた。


「よっしゃー!」

「速い、凄く速い」


キング・カズマの素早い攻撃に、全員が拳を握った。
ミウも例外ではなく、刀を構えつつもその顔には笑みが浮かんでいる。

ラブマシーンは起き上がるとゴキリと首を鳴らし、キング・カズマに接近戦を持ち込んだ。
どうやら、接近戦での素早い攻撃でキング・カズマを倒そうと判断したらしい。
たが、キング・カズマだってそれくらいで隙を見せたりはしない。
先ほど同様、ラブマシーンの攻撃を紙一重で避けていく。
ラブマシーンが放った蹴りを受け止めると、そのままその足を掴み、ラブマシーンに二発の突きを食らわせた。
それによって怯み、隙が出来たのを見逃さず、キング・カズマは回転蹴りをラブマシーンの顔に叩き込んだ。
勢いよく飛ぶラブマシーンに、佳主馬は手応えを感じた。


「いける」


ラブマシーンは起き上がって肩を鳴らしながら、キング・カズマを見た。
キング・カズマは挑発するように掌を上にして、くいくいと手招きした。
だが、ラブマシーンは後退すると、高く飛んだ。
その後を追うキング・カズマ。


「逃がすな」

「ポイントに誘い込んで!」

「こんな奴、僕一人で!」

『!
ダメだよ、佳主馬!』


キング・カズマの言葉に、ミウが慌てた。
今の戦いでかなり手応えを感じたのだろう。
だが、そのまま戦ってしまっては奴の思うつぼだ。

ラブマシーンが飛んだことで、遠くから見ていたアバター達が一気に逃げ出す。
何体かのアバターがラブマシーンに激突し、ラブマシーンの注意が逸れたところを狙い、キング・カズマが蹴りを放った。
勢いのあったその攻撃にラブマシーンは後ろの本棚のようなものにぶつかる。
ラブマシーンは自分のぶつかった三角定規やコンパスを手当たり次第キング・カズマに投げ出した。
それを僅かな動きでかわすと、次に飛んできたのは車だった。
二台の車を蹴りでかわし、ラブマシーンに向かおうとした瞬間、キング・カズマにビルが勢いよくぶつかってきた。
ハッとして見れば後ろからもビルが迫る。
ビルを持つアバターには見覚えがあった。
以前、エキシビションで戦ったアバターだ。
どうやらラブマシーンに吸収され、操られているのだろう。
ハッとラブマシーンを見れば、ラブマシーンの背中にあの円盤が現れていた。
その瞬間、二つのビルが激突した。


『佳主馬!』






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