夏の奇跡

□05.合戦の合図
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あの後話し合った美羽達は、第二次上田合戦の戦略を生かして戦うこととした。
それぞれが一旦別れる。
美羽は佳主馬と後程合流することにして、健二と行動を共にすることにした。
このメンバーの中でもパソコンの扱いに長ける美羽が、佐久間と協力してラブマシーンを閉じ込めるプログラムを作成するのだ。
健二が取り敢えず大まかに内容を説明してから、美羽に電話をバトンタッチする。


『こんにちは、佐久間さん。
昨日少しお話しましたね。
夏姉の親戚の陣内美羽です』

《ああ、改めて初めまして、美羽ちゃん。
ところで、今回の内容なんだけど…》

『はい。
プログラムは、佐久間さんの方が出来ますよね』


健二から事前に聞いていた。
佐久間はそう言ったことに長けると。
実際、パソコンでの情報処理は早いみたいだし、昨日も彼のパソコン操作のお陰でなんとかなったのだ。


《うん、それは俺も思ってた。
プログラムは俺がやるよ。
美羽ちゃん、プログラムの強度お願いできる?かなりキツイ作業になるけど…》

『内容、教えてください』


キツイからやらないなどとは言ってられない。
万助や太助、佳主馬がせっかく自分に任せてくれたのだ。
しっかりとしたい。

美羽は大まかに説明を聞くと、後程パソコンが来てからもう一度話し合うこととした。
佐久間もプログラムが完成してからでないと、説明のしようがないと判断したからである。
美羽は電話を切ると、家の方に走った。










『ちょ、なにそのおっきい段ボール!?』


美羽が駆け戻ると、そこにはおっきな段ボールがあった。
どうやら太助が大学に納品予定のスーパーコンピューターを拝借してきたらしい。
良いのかそれで、と思ったのは内緒である。

健二とともに太助の手伝いに移る美羽。
健二はスーパーコンピューターを見ながら、首を傾げた。


「なんで急に?」

「健二君、さっき万里子おばさん達に向かって、堂々としてたでしょ。
きっと佳主馬も見直したんじゃないかな。
うちはどっちかって言うと、女系家族だから男が弱くてさ」


太助の言葉に、美羽はクスリと笑った。

佳主馬も気の強い万里子達にはあまり頭が上がらない。
だからこそ、健二のことを見直したのかもしれない。
まぁ、佳主馬が健二を気に入ってるのは知ってるけど。
なんと言うか、雰囲気が違うからわかる。

すると、突然衝撃音が響いた。
それにハッと振り向けば、万助が門を壊していた。
大型トレーラーに積んでいた船を通すため、無理やりしてきたらしい。

万助は着くなり、船の電気を一気に点けた。
そのあまりの眩しさに、美羽達は目をつぶる。


「いいだろ、俺の船。
新潟からぶっ飛ばして2時間だ。
300キロワットまでカバー出来るぞ。
おっといけねえ。
こいつ、水冷だった」


そう言うなり、万助は勢いよく船を庭の大きな池に入れた。
あまりの勢いに津波のように波が美羽と健二、そして太助を襲った。
あっという間にびしょ濡れになった三人は、唖然として船を見つめた。
すると、こんどはエンジン音と共に理一が戻ってきた。
見慣れないその車に健二と美羽が寄る。


「何ですか、これ?」

「ミリ波通信用のアンテナモジュール。
松本の駐屯地から借用してきた」

「理一さんって、自衛隊のどこ所属なんですか?」

「ふん。
ちょっと言えないとこ」


そう言って微笑む理一に、美羽は思わず苦笑した。


『職権濫用じゃないの、兄さん?』

「まぁまぁ。
って、美羽なんでずぶ濡れなんだ!?
着替えてこい!」


理一に言われてハッとした。
今日、美羽は薄ピンクのワンピースだったなだ。
ずぶ濡れになったため、これでは透けてしまう。


『忘れてた…
ちょっと着替えてくる』


美羽はパタパタと部屋に戻ると、来ていたワンピースを脱ぎ捨て、タンスから水色の丈の短いワンピースに、下には短パンを着る。
そして早足で佳主馬がいるであろう場所に向かう。









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