夏の奇跡

□04.突然の別れ
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その日の朝は、なんだかおかしかった。
何故かなんてわからないけれど、いつもは人懐こくて、おとなしいハヤテがその日は朝から吠えていた。
不思議に思って時計を見れば、5時10分を少し過ぎた位だった。


「んー…
うるさい…」

『あ、佳主馬。
おはよう』


ハヤテの鳴き声に起きた佳主馬は、まだ半分寝ぼけていた。
いつもはポーカーフェイスの佳主馬が本当に眠そうにしていたので、ついつい笑みが溢れる。

美羽は不思議そうに今だ吠え続けるハヤテに、首を傾げた。


『ハヤテ、どうしたんだろ…』


いつもは吠えたりしないのに…

すると、突然真っ青な顔をした夏希が勢いよく襖を開けた。


『な、夏姉…?』

「美羽、佳主馬っ…
おばあちゃんが…
おばあちゃんがっ!」


夏希の言葉に、血の気が引くのを感じた……











『おばあちゃんっ!』


夏希と佳主馬と共に栄の部屋に飛び込めば、そこには克彦に心臓マッサージをされる栄の姿。
典子や直美や万里子達が栄を囲み、必死に呼び掛ける。
美羽はそんな栄を見て真っ青になった。
体が震えるのがわかる。
美羽は弾かれたように栄の側に寄って、万里子達と共に栄に呼び掛けた。


『おばあちゃん起きて!
おばあちゃん!』

「起きてよ!」

「おばあちゃん!」


直美や理香が呼び掛ける。
だが、栄はピクリとも動かない。
万作が栄の脈を計り、そして瞳孔を見る。
ずっと心臓マッサージを続ける克彦の息が上がり、頼彦が「代われ」と言う。
だが、万作が静かに克彦を見て口を開いた。


「もういい」


その言葉に万里子が克彦の服を掴んだ。


「ダメよ克彦、続けてっ」

「無駄だ」

「続けて!」

『続けて克彦さんっ!!』


万作の言葉に、涙を浮かべた夏希と、真っ青になった美羽が声を張り上げた。
克彦が荒く息をしながら、それでも心臓マッサージを続ける。
だが、次第に力も入らなくなり、克彦は悔しそうに心臓マッサージを止め、膝の上で拳を握った。


「みんな集まってるな。
5時21分」


それが、栄の最期を示していた…











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