夏の奇跡
□00.プロローグ
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わぁ、と歓声が響いた。
パソコンに目を向けていた少女が、パソコン内の人々の歓声を見て微笑んだ。
正座を崩したその太股の上には、世界的有名なアバター…
の、ぬいぐるみ。
実は自作だという本人も自信作であるぬいぐるみを抱き上げた。
フワフワとした感触にも、やっぱり笑みが浮かぶ。
『やっぱり凄いなぁ、キング・カズマ』
少女は抱き締めた自作のキング・カズマのぬいぐるみに笑みを向ける。
すると、画面には見知った人からのメール。
少女は再びキング・カズマのぬいぐるみを太股に乗せると、そのメールを見てついつい笑みを浮かべた。
メールには「明日そっちに着くよ」と短い一文。
でも、それだけでも嬉しく思ってしまう。
会うのは、もう何ヵ月ぶりだろう。
この仮想世界OZでは毎日会っているが、直接会うのは本当に久しぶりだ。
少女はパソコンのキーボードに指を走らせた。
「会うの、楽しみにしてるね」と送る。
明日が楽しみで、少女はぬいぐるみを抱き締めてニコニコと笑った。
これが、少女…
美羽の体験する不思議な夏休みの始まりであった。
summer