星の道しるべ

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「あかり、行かなくて良いの?」

『え?』


うさぎの言葉に首を傾げれば、うさぎは下を指差した。
そこには火球と向き合うスターライツの姿。
うさぎに「いってらっしゃい」と言われ、あかりは微笑んで頷くと地上に降り立った。

火球が最初に気付き、あかりに微笑みを向ける。
するとスターライツがあかりに気付いて振り返った。


「あかり」

『おかえりなさい、火球』

「はい」


微笑み合うと、突然ヒーラーがボロボロと涙をこぼし出した。
それに目を見開くあかり。


「っの、馬鹿あかり!
あんたはどんだけあたし達に心配かければ気がすむわけ!?
昔っからそうよね!」

『ご、ごめん、ヒーラー…』

「っ…
良かったわ、戻ってきてくれて……」


ヒーラーの心からの言葉に、胸がギューッと締め付けられた。

ああ、こんなにもヒーラーは自分を大切に思ってくれていたのだ。

メイカーはそんなヒーラーを宥めながら、あかりに笑みを向けた。


「本当に、戻ってきてくれて良かったです。
おかえりなさい、あかり」

『ありがとう、メイカー…』


お母さんのように微笑むメイカーは、昔から変わらない。
すると突然、ファイターがあかりを抱き締めた。


『ファイター…』


ファイターの肩が震えているのに気付き、あかりはファイターの背中に手を回した。


「っ、良かった、本当に…!
もう二度と、消えないで…」


もう失いたくない。

あかりは申し訳なくなった。
マリナの時も、あかりの時も、ファイターには辛い想いをさせてしまった。
あかりはギュッとファイターを抱き締める力を強めると、目を閉じた。


『もう離れない。
二度と消えたりしないよ』


今度こそ、二人で幸せになるの。
ずっと、ずーっと。


「愛してるわ、あかり」

『あたしも愛してるよ、星野…』


この先も、永遠にあなただけを愛してる――……













数日後、あかり達は十番高校の屋上にいた。
内部太陽系セーラー戦士に、外部太陽系セーラー戦士、そして衛。
向かいにいるのはスリーライツと火球。


「皆さん、どうしても行ってしまうんですか?」

「ええ…
故郷の仲間達が待っていますから」


亜美問いに、火球がやんわりと答えた。
そう。
今日、彼らは帰ってしまう。
彼らの故郷、キンモク星へと。


「新しい星を創って見せるよ。
プリンセスとともにね」

「頑張ってね!」


亜美の肩に乗っていたルナが、キラキラと輝く瞳で言った。
アルテミスがそれにかなり戸惑っているのにはつい笑ってしまった。


「ありがとう、ルナ」


動物には優しい夜天は、にっこりと微笑みをルナに向けた。
するとルナは溶けきり、アルテミスはかなり慌てていた。
まったく、相変わらずなんだから。


「お団子、良かったな、彼氏が無事戻ってきて」

「うん。
星野も、あかりが無事で良かったね」


うさぎの言葉に、思わずむせてしまいそうだった。
なんでここで自分の名前が出るんだか。
するといつものようなレイとうさぎの言い合いが始まり、あかりは微笑ましく思いながらそれを見ていた。


「衛さん。
これからは、お前が守ってやれよ。
…なんてな。
これ、どっかの気障なやつが言ってた台詞」

『あははっ!
星野に言われちゃったね、はるか』

「煩いぞ、あかり」


でも、後から思えば、あの時のはるかの言葉はかっこ良かった。
さすがははるか。
男前だ。


「わかってる」


衛がどこか真剣な表情で答えた。

大丈夫。
だって衛はうさぎに負けないくらい、うさぎにベタ惚れなんだから。

すると、美奈子があかりの肩を叩いた。


「あかりちゃん、星野君たちとキンモク星に行かなくて良いの?」


それは全員が思っていたことらしく、全員があかりを見た。
あかりは微笑むと、頷いた。


『キンモク星の復興が終わったら、来てくれるだもんね、星野』


あかりが言うと、星野が頷いた。
どうやら、それは二人でちゃんと決めたらしい。


「行くなんて言ったら全力で止めてやる。
僕はまだお前とあかりの交際を認めた訳じゃない」


はるかのトゲトゲした言葉に、星野がムッとして、またいつものケンカが始まった。
あかりはそれをあきれて見て、みちるに助け船を求めた。
だが、みちるはキラキラした笑顔で爆弾発言をした。


「うちの娘はまだまだお嫁には出さなくってよ」

『ちょっ、みちる!!』

「嫁なんて絶対に認めない!!」

『ちょ、はるか落ち着いてよ!(汗)』


慌ててはるかを落ち着かせようとするあかり。
するとうさぎがワナワナと震え、星野の胸ぐらを掴んだ。


「いくら星野でも、あかりをお嫁さんにするなんて許さないーー!!」

『うさぎまで!?
ちょっと落ち着いてよみんなっ(汗)』


あかりはグッタリとしながらため息をついた。
すると、それを見ていたほたるがクスクスと笑った。


「あかりモテモテだね」

『何だか嬉しくないわよ…』

「仕方ありませんよ。
みんな、あかりが好きなんですから」

『だからってこれはないと思わない?
せつな…』


あかりは再びため息をついた。
まったく、本当に変わらないんだから。


『いい加減にしないとみんなのこと嫌いになるわよ!』

「「ごめんなさいっ!!」」


あかりの言葉に即座に謝ったのは星野とうさぎ。
はるかとみちるは無言になった。
そんな素直な姿に、全員が笑った。

すると、ふと思い出したように星野があかりを見た。


「あかり、浮気はするなよ」

『星野こそ。
浮気したら許さないからね』


そう言って笑い合うと、星野達はスターライツへと変身した。
これでお別れ。
でも、みんな笑顔だった。


『じゃあ、またね』

「ええ。
また会いましょう、あかり」


ファイターがそう言うと、キスをあかりの唇に落とした。
うさぎとはるかがきれそうになり、美奈子達は悲鳴をあげた。
あかりはフワリと微笑むと、ファイターを見つめた。


『待ってるから』

「ええ」


それだけ言って、スターライツと火球はキンモク星へと帰っていった。
四人が去っていった空を見上げ、あかりは左手を胸にあて、右手を左手にそっと重ねた。


『(また会おうね、星野。
愛してるよ…)』


流れ星が、空に輝いた。




fin

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