星の道しるべ
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暗くなってきた家の中。
あかりは電気もつけずに、ソファーに座っていた。
あの日…
学園祭のあったあの日から、学校には行っていない。
はるか達にも会ってない。
うさぎ達も、はるか達も、星野達も大切だから失いたくない。
争ってほしくない。
でも、どうしたらいいのかわからない…
ケータイを開き、メールの受信ボックスを見る。
ケータイは、あの日に取り返した。
受信ボックスにはうさぎ達からのメール。
既に読んではいたが、返信はしなかった。
いや、出来なかった。
うさぎがセーラーティンにゃんこに襲われたこと、衛から手紙の返事が来てないこと、衛に会いたいと泣くうさぎに星野もレイ達も何も言えなかったこと。
うさぎに過保護になりすぎて、逆に追い込んでしまったこと。
色々なことが書いてあった。
衛に会いたいと泣くうさぎの元に駆けつけたかった。
「あたしがいるよ」と言ってあげたかった。
でも、言えなかった。
あかりは自分に嫌気がさし、ため息をついた。
その瞬間、ケータイの着信音が流れた。
少し驚きながらもケータイに目を向ければ、ディスプレイには「星野」の文字。
受信ボックスを開き、星野のメールを開いた。
内容はスリーライツのファイナルコンサートに来てほしい、と。
すぐに予想出来た。
きっと、このファイナルコンサートで希望の光を見つけようと思ったのだろう。
もし見付からなくても、これを期にギャラクシアと戦うつもりだったのだろう。
『(あたしだけ、逃げるの…?)』
大切な人が、これから戦いに行くのに…
あかりは傘を手にすると、家を飛び出した。
「あかり…」
『、うさぎ…』
コンサート会場につき、あかりはまっすぐにスリーライツの楽屋に向かった。
楽屋から出てきたのは、うさぎ。
あかりは一瞬うさぎから視線を反らしてしまったが、小さな微笑みを浮かべた。
『うさぎが辛いときに、側にいてあげれなくてごめんね…』
うさぎがどれだけ衛を好きか、あかりがよく知ってる。
あかりがそう言うと、うさぎは首を横に振った。
「あかりは悪くないよ。
寧ろ、あたしがあかりを支えられなくてごめんね」
『ううん…
ごめんね、自分勝手で』
「…あたしがあかりの立場だったら、きっと同じことしたよ」
あかりはうさぎの言葉に小さく微笑み、そっとブローチに触れた。
シトリンの力を、プリンセスとして覚醒していない自分は引き出すことができない。
でも、それでも皆は自分を大切にしてくれる。
守ってくれる。
だからあかりも皆を守りたい。
『うさぎ』
「ん?」
『大好き』
ふわりと微笑めば、うさぎは一瞬キョトンとし、次の瞬間あかりに抱きついた。
「あーもう、あかり大好き。
可愛いっ」
ぎゅうぎゅうと抱き締める力はちょっと強くて苦しいが、あかりは笑ってうさぎの背中を撫でた。
「あかりは、あたしが守るっ」
『あたしのセリフだって』
プリンセスにしてセーラー戦士であるうさぎとあかり。
同じプリンセスだからこそ、わかる痛みがある。
プリンセスだからこそ、わかる悲しみや苦しみがある。
「わかりあえるよね、皆」
『うん。
あたしは…
あたし達は、信じてる。
皆がわかりあえるって』
きっと、わかりあえる。
うさぎとあかりはニッコリと微笑みあった。
「あかり、星野に会いに来たんだよね。
いってらっしゃい」
『うん。
またね、うさぎ』
あかりはうさぎが見えなくなるまで見送り、そして楽屋のドアをノックした。
中からは星野の声。
ああ、中には星野しかいないのだろう。
星野はうさぎが衛に会いたいと泣く姿を見たと聞いている。
きっと、うさぎを心配して、二人きりで話をしたのだろう。
星野らしい。
あかりはクスリと笑い、ドアを開けた。
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