星の道しるべ
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今日は学園祭。
うさぎ達のクラスは喫茶店。
うさぎやまこと達はウエイトレスの格好で仕事をしていた。
と、そこにいつもの軽い調子で星野が入ってきた。
「よっ!」
みんなは驚いた表情をしたが、うさぎは笑顔を浮かべた。
最近、星野…
いや、スリーライツが来ていなかった。
だからこそみんな驚いたのだ。
うさぎが驚かないのは、星野に会っていたから。
今日星野に学園祭に来るように言った張本人はうさぎ。
うさぎからまことのケーキが美味しいと聞いていたからとは言ったが、おそらくあかりやうさぎ達を心配していたのだろう。
特にあかりの。
あかりが言っていた。
あのコンサートの日以来、はるか達が星野達と会うのを禁じていると。
ケータイも取られたらしく、連絡も出来ないと。
スリーライツ…
いや、スターライツとはちゃんとわかりあえる。
そう思っているあかりにとって、星野達と離されるのはかなり辛いのだろう。
勿論うさぎ達も辛いが、あかりは前世からどちらとも仲がいいのだ。
星野はあかりの彼氏だし。
だから、うさぎもあかりと星野を心配していた。
まことが今はケーキが切れているから、作ってくるとレイと去っていった。
キョロキョロと辺りを見る星野を見て、うさぎがクスッと笑った。
「星野、良いところに来たね。
今から始まるんだよ」
「は?
何がだよ?
つーか、あかりは…」
あかりはどこにいるんだ?と尋ねようとした時、お客達が拍手をしだした。
それに目を向ければ、ワンピース姿のあかりが電子ピアノに手を置いていた。
「あかりにはピアノを弾いてもらってたんだ。
さっきまで休んでて、今からまた再開するの」
あかり目当てのお客さんもいるんだよ、とうさぎが笑った。
淡い黄色のワンピースを来たあかりを、ただじっと星野は見ていた。
あかりの演奏が始まると、みんな目を閉じてその音色に聞き入る。
だが、星野は少しだけ眉を寄せた。
いつもの、あかりの音じゃない…
そんな星野を見て、うさぎが微笑む。
「気付いた?
あかりね、星野達に…
星野に会えないのが相当来てるみたいなの」
学校に来ても、星野の席を見てボーッとしてる時があるし、食欲もなくなっている。
どちらも大切だから、どうしたら良いのかわからなくなっているのだ。
あかりは、みんなのプリンセスだから。
「あかりに、星野が来ること言ってないの」
「え…?」
「あかりのこと、ちゃんと抱き締めてあげてよ」
うさぎの優しげな笑顔と声色に、星野は目を見開いた。
いつもなら、あかりに抱き付くなと怒るのに。
それがわかったのか、うさぎは小さく笑ってからあかりを見た。
「星野にあかりを取られちゃうのは嫌だよ。
でも、あかりが辛いのはもっと嫌なんだよ」
今、あかりを笑顔に出来るのは星野だから。
星野は微笑み、うさぎに感謝の言葉を口にした。
一曲終わり、あかりが鍵盤から手を離す。
それを見計らって、うさぎはあかりを呼んだ。
あかりは取り敢えず客に一礼し、うさぎに駆け寄り、目を見開いた。
『……星野?』
「よぉ、あかり」
星野を見て驚くあかり。
星野はサングラス越に微笑み、あかりを抱き締めた。
幸い、客は会話などに夢中で気付いていない。
うさぎは気を利かせて、仕事に戻っていた。
「会いたかった、あかり…」
『っ、あたしも、会いたかったよ…』
ギュウッと抱き締め返せば、星野の温もりが伝わってくる。
会いたかった…
やっぱり星野が好きだと実感し、あかりは星野に体を預けるように、目を閉じた。
『ごめんなさい、星野。
はるか達が…』
「いや、俺達もごめんな」
はるか達もだが、夜天と大気もうさぎ達を認めていない。
どちらも相手を敵対視してしまっている。
そんなんじゃ、上手く行くわけない。
あかりは星野から離れると、星野を見つめた。
『わかりあえる、よね』
「…ああ。
大丈夫だ」
星野は微笑み、あかりの頭を撫でた。
それに嬉しそうに笑い、あかりは口を開いた。
『来てくれて、ありがとう』
「おぅ」
互いに笑い合うと、そこに慌てた様子でレイが駆け込んできた。
「大変よ!
大気さんと夜天君が、ちびちびちゃんを…!」
『!』
それに目を見開き、あかりは教室を飛び出した。
慌てて星野達も後を追う。
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