星の道しるべ

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"きっとわかり合える…"


あかりは走っていた。

たまたまかけたラジオ。
そのラジオには星野が出ていて、星野はこっそりとうさぎにメッセージを送っていた。
それにはあかりもすぐに気が付いた。
今まではうさぎ、いやセーラームーンを否定していた星野。
その星野がそう言ってくれたのが嬉しかった。
会いたくて、あかりは家を飛び出した。
そしてそれと同時に嫌な予感がした。
嫌な予感は、大抵当たる。
あかりは走るスピードを上げた。

ラジオ局につくと、そこにはセーラームーン達とファージ。
そしてクロウがいた。
クロウだけということは、セイレーンは消されたのだろう。

あかりは影に隠れ、ブローチを掲げた。


『サン・ピュアライトパワー・メイクアップ!』


サンはセーラームーン達を狙ったファージの攻撃をサンシャイン・リフレクターで防ぐと、セーラームーンに駆け寄った。


『セーラームーン、大丈夫?』

「サン!」


サンを見て、セーラームーンが笑顔を浮かべる。
サンもセーラームーンに笑顔を浮かべ、ロッドを構えた。
セーラームーンもロッドを手にする。
互いに頷き合い、口を開いた。


「シルバームーン・クリスタルパワー・キッス!!」

『サンライト・エルドール・ヴィオプリエール・キス!!』


セーラームーンとサンの攻撃きより、ファージが人間への姿に戻る。
セーラームーンの隣で、サンは奥で悔しげな顔を見せるクロウを見つめた。


「よくも、あんた達のせいでセイレーンは…
あんた達、まとめて始末してあげるわ!」


鞭を構えるクロウ。
それを見て内部太陽系戦士がセーラームーンとサンを守るように立った。
皆がセーラームーンとサンに逃げるように言うが、それを二人は拒否した。


「だめっ!
逃げるわけには行かないわ…」

『そうね。
あたし達、逃げるわけにはいかないわよね』


セーラームーンとサンは互いをちらりと見て、笑みを浮かべた。

考えてることは、同じ。


『「あたし達には、この星を守る使命がある!」』

「利いた風な口を!」


セーラームーンとサンの言葉に、クロウが声を張り上げた。
そこで気が付いた。
背後…
ビルの影に人影があることに。
ハッとした時には遅く、サンシャイン・リフレクターでは間に合わない。
サンは咄嗟にセーラームーンを突き飛ばした。

セーラームーンは、失っちゃいけない。

来るであろう衝撃に、サンは目をつぶった。


「あかりっ!!」


聞き慣れた、大好きな声にハッとして目を開ければ、星野の体がグラリと傾いた。


『星野!』


咄嗟に抱き止めたが、小柄なサンでは支えきれず、星野を抱き締めたままその場に崩れる。
敵の攻撃をサンの代わりに受けた星野。
サンは無傷だったが、今の星野はただの人間。
ファイターの時ならともかく、人間である星野が攻撃を食らったら、最悪…


『星野、星野しっかりして!
星野!!』


呼んでもピクリとも動いてくれない星野に、サンは青冷め、冷や汗を流した。
最悪な場合を考えて、手が震える。


「にゃんこ、なんであんたがここに…!」

「おたくが頼りになんないから、着てやったのよ」


クロウはビルの影にいたセーラー戦士を見て言った。
知り合いということは、彼女もギャラクシアの手先なのだろう。
その瞬間、声が響いた。


「スター・センシティブ・インフェルノ!!」

「スター・ジェントル・ユーテラス!!」


ヒーラーとメイカーの攻撃をクロウとセーラーティンにゃんこは避ける。
ヒーラーとメイカーはそれを見つつ、サンと星野を守るように立った。


「サン、大丈夫!?」


ヒーラーが心配してサンに尋ねたが、サンはそれどころではなかった。
このままでは星野が死んでしまうかもしれない。

自分のせいで…


『星野、お願い起きてよ…
絶対消えないって言ったじゃん!』


そう言っても、星野は言葉を返してくれない。
グッタリとした体は、少しも動いてくれない。


『やだ…
やだやだやだ、やだぁ!!』


その瞬間、サンの額の星の記しが輝いた。
サンの姿が一瞬淡いピンク色のリボンになり、次の瞬間には淡いピンク色のドレスへと変わっていた。
そこにいたのはセーラー戦士、セーラーサンではなく、太陽国唯一の生き残りである太陽のプリンセスだった。

あかりの強い輝きに、クロウとセーラーティンにゃんこが目を見開く。


「綺麗…
こんなに美しい星の輝き、初めて…」


スターシードを見ているわけではないのに、ここまで伝わってくる強い星の輝き。
あれこそ、真のスターシード。

それを見たメイカーとヒーラーは、あかりと星野を守るために構えた。
セーラームーン達もあかりを守るように構える。
セーラー戦士の人数の多さに、クロウは舌打ちした。
これでは、圧倒的にこちらが不利。
この状況であのスターシードを奪うのは、自殺行為だろう。
それはセーラーティンにゃんこも同じ考えのようだった。


「っ、一時退却よ」

「あんたのせいよ!
あんなに美しいスターシードが、目の前にあったのに!」


そう言うと、クロウとセーラーティンにゃんこは去っていった。
それにホッと少しだけ肩の力が抜けるセーラームーン達。
だが、


『星野、星野ぁ…』


あかりの声に眉を下げた。
ヒーラーとメイカーも悲しげな表情を浮かべる。
今のあかりに、何て声をかけたらいいのかわからない。
あかりは、そっと星野の右手を両手で包み込んだ。


『お願い。
死なないで、星野…』


あかりの頬を一滴の涙が伝った瞬間、あかりの額の星の記しが再度輝き、それに合わせるようにあかりの胸元が輝いた。
そこにあったのは、美しい花。
金色に輝く、クリスタル。
太陽国のプリンセスが持つ、黄水晶。
シトリン――…

あかりがそっと瞳を閉じた。
するとシトリンが淡い光を放ち、光の粉のようなものが星野を包んで、そして消えた。
光が消えたと同時にあかりの体がグラリと傾いた。
倒れた瞬間、あかりの額の記しが消え、シトリンがスウッと消えた。
ドレスが弾けるようにリボンへと変わり、私服姿のあかりに戻る。


「あかり!」


慌ててヒーラーがあかりを抱える。
あかりの瞳は固く閉ざされ、苦し気に呼吸を繰り返していた。
顔色もかなり悪い。
星野は、メイカーが支えていた。


「あかり、星野…!」


あかりと星野を心配して、セーラームーンが近寄る。
それに、ヒーラーとメイカーが声を張り上げた。


「触らないで!
星野とあかりの体に触れないで、セーラームーン…!」

「あなたのせいで、あかりが危険な目に遭い、星野は傷を負った。
あかりに言われたから我慢していたけど…
本当は、あかりに近づかないでいただきたいわ」


ヒーラーは苦し気なあかりを持ち上げ、抱く力を少しだけ強めた。
メイカーはセーラームーンを睨み、だけど心配そうにチラリとあかりを見た。


「貴女方がこの星を守るのは勝手よ。
でも、私達とあかりを巻き込まないで!
あかりは、貴女方には任せられない。
あかりは、私達のプリンセスです!」

「貴女は、あたし達に悪いことを呼び寄せる元凶よ!」


メイカーとヒーラーの言葉に、セーラームーン達は悲痛そうな表情をした。

せっかく、わかりあえると思ったのに…


「これ以上近づかないで」

「さようなら」


そう言うと、メイカーは星野を、ヒーラーはあかりを抱き上げて去って行った。







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