星の道しるべ
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『さて、どこから話すべきかな…』
あかりの目の前には星野、大気、夜天。
真実を伝えるために、あかりは星野逹のマンションに来ていた。
ソファーに座り、少し悩んでから口を開く。
『今日のでわかったと思うけど、うさぎは月のプリンセスであるセーラームーン。
レイ、美奈子、亜美、まことは、内部太陽系のセーラー戦士なの』
うさぎは月のプリンセス、セーラームーン。
レイは火星を守護に持つセーラー戦士、セーラーマーズ。
美奈子は金星を守護に持つセーラー戦士、セーラーヴィーナス。
亜美は水星を守護に持つセーラー戦士、セーラーマーキュリー。
まことは木星を守護に持つセーラー戦士、セーラージュピター。
『あたしが彼女逹と知り合いなのは、うさぎと幼馴染みだってこともあるけど、一番の理由は前世で繋がりがあったから』
星野逹に話したことあった。
月の王国には大切友達がいる、と。
その友達と言うのが、月のプリンセス。
プリンセス・セレニティ。
マリナの、大切な友達だった。
「あかりが彼女逹と繋がりがあったのはわかった。
でも、なんで僕達に何も言わなかったの?」
『……それは、あたしが中立の立場だから』
夜天の言葉にあかりは目を伏せた。
『あたしは太陽のプリンセス。
星野逹のプリンセスであり、うさぎ逹のプリンセスでもある。
ウラヌスとネプチューン、覚えてる?』
そう尋ねると、3人は眉を寄せた。
みちるとのジョイントコンサートの日、自分達を攻撃してきたセーラー戦士。
あの棘のある言い方が気にくわなかった。
『ウラヌスとネプチューン…
いえ、はるかとみちるは外部太陽系セーラー戦士。
彼女逹は特にあたしやうさぎを守ろうと、必死になってくれてる』
何度助けられただろう。
初めはわかり合えなかったけど、彼女逹は次第に受け入れてくれたし、自分達だって彼女逹を受け入れた。
『もしあたしがうさぎ逹にスターライツはスリーライツだって言ったら。
星野逹にセーラームーンはうさぎだって言ったら、今みたいに仲良く出来たと思う…?』
きっと、戸惑って、すれちがってしまう。
うさぎや内部太陽系セーラー戦士はスターライツを嫌ってはいなかったから、戸惑いながらも仲良くしようとするだろう。
でも、スリーライツはきっと違う。
自分達は彼女逹とは違うと、壁をつくっていただろう。
はるかやみちるは、きっとすぐに攻撃してきただろうし。
『うさぎ逹も、星野逹も、互いにただの人として接していたときは楽しそうだった。
それを、あたしは壊したくなかった』
うさぎと星野のやりとりは面白かったし、時々レイとうさぎを弄る姿は楽しかった。
大気と亜美の頭脳対決みたいな部分も面白い。
まこととは料理の面で気が合いそうだったし。
美奈子のこといやがってはいたけど、何だかんだでそこまで嫌ってない夜天を見てるのは、なんだか嬉しくも感じた。
はるかとスリーライツは仲が悪かったけど、みちるの悪戯にはスリーライツもちょっと楽しそうだった。
そんな関係、崩したくなかった。
自分にとっては、どちらも大切な人達だから。
『そしてもう一つ。
あたしが言ったところで、皆が変わらないと思ったから』
協力は勿論しないだろうし、互いにいがみ合ってしまうだろう。
自分で気付いたからこそ、わかるものはある。
でも、中立の立場にいなくてはならないあかりが言っても、きっとなにも変わらない。
そんな無意味なこと、したくなかった。
「…あかりの言いたいことはわかりました。
貴女にとっては、辛いことだったと思います」
幼馴染みであるうさぎ。
仲のいい友達のレイ逹。
そして、親代わりとなってくれたはるかとみちる。
沢山の試練を、支え合って切り抜けてきた、かけがえない仲間逹。
星野逹は、全てを失ったマリナに居場所をくれた。
優しさを、楽しさをくれた。
大切な、大好きな家族。
「あかり、貴女は…
私達を売ろうとしましたか?
騙していましたか?」
「大気!!」
あかりが目を見開き、星野は大気に怒鳴った。
大気に掴みかかりそうだった星野を軽く制し、あかりは目を伏せた。
『騙してた、か…
そうね。
そう思われても、仕方がないよね。
でも、』
あかりは顔を上げると、真剣な表情で大気を見つめた。
『貴方逹を売るようなこと、あたしは絶対にしない』
確かに騙すような形になってはいたと思う。
あかりは、知っていたのだから。
でも、売るなんて、そんなことしない。
大切な人を売るなんて、絶対にしない。
あかりの表情を、目を見て大気はホッとしたように息を吐いた。
「すみません、辛い質問をしてしまって。
でも、安心しました。
やっぱりあかりはあかりですね」
大気の微笑みに、あかりもふわりと微笑んだ。
『スターライツのこと、うさぎ逹にも話すね。
約束、だから』
「ああ。
わかってる」
あかりは立ち上がると、背伸びした。
良かった、とりあえず伝えられて。
『じゃあ、あたし帰るね』
「送る」
『え、大丈夫だよ』
「送る」
意見を曲げない星野に少しだけ苦笑し、あかりは「わかった」と言った二人でマンションを出ると、星野があかりの手を握ってきた。
恥ずかしくて離そうと思ったが、人はいないし、暗いし…
と言うことで、あかりは少しだけ握り返した。
「あかり、ありがとな」
『ううん、いいよ別に』
一瞬なんのことを言っているかわからなかったが、すぐに星野逹に話したことを言っているのだとわかった。
『それより、星野。
あたし、変身しちゃダメだって言ったのに…』
わかってたでしょ?
あたしが変身しちゃダメだって、星野に目で伝えたの。
あかりがそう言うと、星野は苦笑した。
「わかってたけど、あかりが危ない目に合ってんのに黙って見てられねぇよ」
わかってた。
あかりが変身しちゃダメだって言ってることくらい。
敵の前で変身したら、また狙われるかもしれないとあかりが自分を心配してくれていたのも、わかっていた。
でも、だからってあかりが危ない時に黙ってるなんて出来ない。
「お前こそ、あのままスターシード抜かれる気だったのかよ?」
『まさか。
あたし、あの場で変身しようと思ったのよ』
そう簡単に消えてたまるか。
足掻いて、足掻いて、足掻きまくるつもりだった。
『あたしだって、星野逹と離れたいわけじゃないもん』
大好きだから、離れたくなんてないんだよ。
そう言って微笑んだあかりを見て、星野も笑顔を浮かべた。
この穏やかな時が、ずっと続けば良いのに…
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