星の道しるべ

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『こんなことしなくても、行くのにね』


あかりは郵便受けに入っていた手紙を見て笑みを浮かべた。
中に入っていたチケットは、すでに星野から貰っていたし、元々行くつもりだった。
だって、自分は太陽のプリンセス。
逃げるわけにはいない。

あかりは自分の部屋の机に飾っていた写真を見た。
星野と二人で撮った写真を手にし、そしてそっと写真立てを伏せた。


『もしもの時はお願いね…』


そう呟いて、あかりは家を出た。












『相変わらずよね、スリーライツの人気』


星野の隣に座り、あかりが呟いた。
今日はスリーライツ主演の映画の試写会。
しかも、飛行機で。
美奈子逹には申し訳ないが、あかりはファーストクラス。
星野から貰ったのがそうだった。

星野と話していると、うさぎがこちらに飛び込んできた。
うさぎはチケットを持っていなかったから、ここには乗れないはず。
そのうさぎが慌てて来たと言うことは…

あかりはやっぱり、と小さく呟いた。


「お団子?」

「星野!
このイベント、中止して!」


やっぱり、そうなんだねうさぎ…
ああ、どうせならうさぎには来てほしくなかった。
大事な幼馴染みであるうさぎを、危険な目には合わせたくなかった。


「とにかくダメなの!
この飛行機は……」

『うさぎ、取り敢えず座りなよ』

「え?」

「もう動いてるよ」


夜天の言う通り、飛行機はもう動いていて止められない。
あかりはそっとうさぎの手を握った。


「あかり…」

『…わかってる』


泣きそうな顔のうさぎに、あかりは小さく微笑んだ。

大丈夫だよ。
必ず、守って見せるから。

あかりは立ち上がると、うさぎの耳に顔を寄せた。


『何かあったら、皆をお願いね』

「!
あかりは…!?」

『大丈夫。
そんな簡単にスターシードは渡さないわ。
ただ、あたしはあたしで、うさぎや皆を守りたいのよ』


大丈夫。
スターシードは渡さないから。
だって、渡したら皆と一緒にいられなくなっちゃうから。
足掻いて、足掻いて、足掻きまくるよ。

あかりはうさぎを座るように促し、あかりの前の席に座らせた。
うさぎの頭を一度撫で、星野の隣に座り直す。
そして、コテンと星野の肩に少し寄りかかった。


「あかり、どうした?」

『なんでもないよ』

ただ、したかっただけ。

そう言うと、星野はあかりを抱き寄せた。

この温もりを、失いたくない…


「何があったかはわかんねぇけど、お前は俺が守るからな」

『わかってるよ。
そして、あたしも星野を守る』


あたしにとって、大事な人だから。

あかりは目を閉じ、星野の手を握った。
普段なら恥ずかしがってしないから、星野は心配しているのだろう。

大丈夫。
まだ死んだりしないから。





突然、暗かったはずの電気が点いた。


『!(来た…っ!)』

「何だ!?」


あかりはハッとして構えた。
そこにはファージが3人。敵も、本気のようだ。


「シートベルトをお締めください!」


3人はシートベルトのようなものを出すと、スリーライツを椅子に縛りつけた。
あかりが星野のシートベルトを外そうとしたが、外れない。
かなり頑丈だ。
すると、そこにセイレーンが現れた。


「本日はご搭乗、ありがとうございます」

『(セイレーン…!)』


セイレーンはフフッと笑うとうさぎとあかりを見た。


「スリーライツと乗客の皆さんの命と引き換えに、貴女のスターシードを頂戴致します。
月野うさぎさん、陽向あかりさん。
いいえ、セーラームーンと太陽のプリンセス!」

「「「「!!」」」」


わざわざセーラーサンではなく、太陽のプリンセスと言ったセイレーン。
やはり、太陽国唯一の生き残りであるあかりのスターシードがよっぽど欲しいのか。


「セーラームーン?
お団子が?」


セイレーンの言葉に、星野逹が目を見開いた。
あかりは星野を見て目を伏せた。

星野逹やうさぎ逹に、あかりは何も言わなかった。
言っても、何も変わらないから。
自分逹で決めなくちゃいけないから。
中立の立場にいなくちゃいけないあかりが、あれこれ言うわけにはいかなかった。


「うふふ。
ここは高度1万フィートの空の上。
逃げられませんよ」

「待ちなさい!」


そこにいたのは、レイ逹だった。


「皆!」








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