星の道しるべ

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「大丈夫か、あかり?」

『うん、大丈夫』


夜…
あかりは星野達のマンションに来ていた。
星野からソファーに座るように言われ、あかりはソファーに座る。
向かいのソファーには夜天と大気、そして星野が座った。
大気がミルクティーを淹れてくれたので、あかりはそれに「ありがとう」と言って微笑むと、大気も微笑み、「どういたしまして」と言ってソファーに座り直した。


「で、何でセイレーンにバレたのさ」


明らかに機嫌の悪い夜天。
星野がそれを注意しようとしたが、あかりはそれを制した。

夜天が怒るのも、無理はない。


『セイレーンがあたしを狙って、あたしに接触してきたの。
そこに、たまたまちびちびちゃんが迷い混んじゃって…
セイレーンがちびちびちゃんに危害を加えそうだったから』

「だから、あいつの前で変身したの?
バレるってわかってて」


夜天の厳しい言い方に、あかりはビクリと肩を揺らした。
大気が慌てて夜天を止めようとしたが、それは逆効果で夜天は声を荒げた。


「だって、バレてるんだよ!?
真のスターシードを持ってるってだけじゃない。
太陽国唯一の生き残りである、太陽のプリンセスだってバレたんだよ!?
狙われるってわかるだろ!!?」


あかりはギュッと手を握りしめ、俯いた。

夜天の言っていることは、間違ってない。
あかりは太陽のプリンセス。
バレたら狙われることも、バレちゃいけないこともわかっていた。


『…ごめんなさい』

「何がごめんなさいだよ!
ふざけるな!」

「夜天!
いくらなんでも言い過ぎだ!!」


立ち上がって怒鳴った夜天に、星野も立ち上がって声を荒げた。
大気も立ち上がり、二人を止めようとする。


「なんで自分を守ろうとしないんだよ!
プリンセスだって自覚、本当にあるの!!?」

「夜天!!」

「夜天、いい加減にしなさい!」

『止めて、星野、大気!』


あかりは声を張り上げた。
それに、星野と大気はあかりを見た。


『夜天は悪くないよ。
事実だもん』

「でもあかり…!」

『大丈夫だよ…
あたしは、大丈夫』


そう言って、あかりは微笑んだ。
あかりは立ち上がると、夜天に深く頭を下げた。


『ごめんなさい、夜天…
言い訳になるかもしれないけど、バレてしまったとしても、ちびちびちゃんを助けたかった…』


あの時、変身することしか対策が思い付かなかった。
冷静になれば、もしかしたら対策があったかもしれない。
でも、あの時の自分には思い付かなかった。


『プリンセスとしての自覚は、夜天の言う通り足りないと思う…』


守ってもらおうとか、そういう風に考えたことが正直ない。
それだけ、自分にはプリンセスとしての自覚がない。


『ごめんなさい…
貴方達はプリンセスを…
火球を捜してて忙しいのに、こんなことになってごめんなさい』


本当の星野達…
スターライツのプリンセス、プリンセス・火球…
彼女を、彼等は捜している。
それを、自分という存在が邪魔してしまっている。


『大丈夫だから。
自分の身は、自分で守れるようにするから。
だから…
3人は、3人のプリンセスである火球を見付けて?
火球を、守ってね…』


きっと、3人なら見付けられるから。
彼等のプリンセスである火球を、きっと見付けられるから。


『あたしのことは、守らなくても大丈夫…』


そう言って微笑んだあかりは弱々しくて、今にも壊れてしまいそうだった。
微かに震えるあかりの手を見て、星野はハッとした。
必死に笑顔を浮かべてはいるが、辛くないわけがない。


『じゃあ、長居するのも悪いし、あたし帰るね』

「あかりっ!」

『……星野達には、火球がいるでしょ?』


そう言うと、あかりはマンションを出ていってしまった。
追いかけようと思った。
でも、出来なかった…

星野はあかりを掴めなかった自分の手を見て、拳を握った。


「夜天」

「っ……」


夜天は唇を噛み締めると、ソファーに乱暴に座った。


「あんな顔、させるつもりなかったのに…っ」


夜天の言葉に大気は目を伏せた。

あかりは、気付いていた。
自分達の、火球への強い思いに…
火球もあかりも、自分達にとって大切なプリンセス。
それは変わらない。
だけど、火球とあかり、どちらかを選べと言われたら…

あかりは太陽のプリンセス。
太陽のプリンセスは皆で守るのが基本。
だから、自分達のプリンセスであると同時に、他の人のプリンセスでもある。
でも、火球は違う。
火球は、自分達だけのプリンセス…

あかりも火球も、大切なかけがえのないプリンセス。
でも、もしもどちらかしか選べと言われたら…
火球を、選ぶかもしれない。
自分達だけのプリンセスだから。

あかりは、それに気付いていた…


「…あいつ、震えてた」


星野の呟きに、大気と夜天は星野を見た。
細かく震える体を、必死に笑顔で隠していたあかり。


「プリンセスだってバレて、一番怖いのはあかりなんじゃねぇのか…?」


自分のせいで人が傷付くのを、あかりは嫌っている。
それは、前世のことも影響しているからだろう。
それと同時に、狙われるという怖さもあかりは知っているのだ。
今、一番不安で、恐怖を感じているのはあかりのはず。


「…そうですね。
きっと、一番怖いのはあかりでしょう」


大気は夜天を見ると、口を開いた。


「人を見捨ててしまうようなプリンセスだったら、私達はあの子を守ろうとは思わなかった」


違いますか、夜天?

そう尋ねると、夜天は拳を握った。


「そうだよ…
僕だって、あかりがそういう子だってわかってる。
わかってるよ…」


彼女の優しさに、人を包むような光に、笑顔に惹かれて、あかりを守ろうと思った。
大切な、プリンセス…








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