星の道しるべ

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「うひゃー…
すっごーい」


うさぎは大きなコンサートホールに来ていた。
周りには沢山の人。
開場30分だと言うのに、既に当日券は売り切れ。
テレビ局まで来ていて、賑わっていた。


「やっぱりあかりちゃんって凄いわね」


レイは集まった人を見て呟いた。
とにかく人、人、人。
なんだこの人数って言いたくなるくらいいっぱいいる。
亜美も感心して頷いた。


「流石よね。
あの方なんかピアニストの吉川さんじゃないかしら」


うさぎ達から少し離れた場所に一人立っている男性を見て、亜美が言った。
男性のピアニストで、長調よりも短調を得意とする有名なピアニスト。


「あ。
あたしはあの人見たことある…」


美奈子が指差したのは、女性二人組。
それを見た亜美が「ピアニストの佐々木姉妹じゃないかしら」と言った。
双子の姉妹で、主に連弾で活躍してるとか。


「あ、あれキャスターの林道あやじゃないか?」


まことが指差したのは、マイクを持ってる若い女性。
美人キャスターとして活躍する彼女まで来ていたことに、全員が驚いた。


「見付けられないだけで、もっといるでしょうね」


有名人。と付け加えた亜美。
でも確かに。
ちょっと見ただけでこれなんだから、きっともっといっぱいいるだろう。


「ま、取り敢えずあかりのところ行こうよ。
お花渡したいし」


うさぎの言葉に頷き、うさぎ達は会場の裏へと回った。

今日はあかりのコンサートの日。
やっぱり今まで注目を浴びながらもコンサートはしない、テレビや取材に応じなかったあかりが、コンサートを開くと言うことで多くの報道陣やファンが集まっていた。
チケット、あかりに貰っておいて良かった、とうさぎ達は内心ホッとしていた。
因みに、チケットは勿論招待券である。

裏口から入り、うさぎ達はあかりの楽屋をノックして入った。


「あかり、来たよー」

『あら、うさぎ。
皆も』


早かったね、とあかりは微笑んだ。


「うわー、あかり綺麗ー」


うさぎはあかりのドレス姿にうっとりとした。
あかりのドレスは、淡いピンク色でとても似合っていた。
うさぎの言葉に頷くレイ達。
そんな皆の反応に、あかりは頬を赤くした。


『あたしは私服で良いって言ったんだけど、みちるがね…』


ああ、と納得してしまったのは仕方がないと思う。
だって、みちるはあかりの母親代わり。
手伝いとして演奏会で演奏したことはあったが、こうしてあかりのコンサートは初めて。
みちるが気合いを入れるのは、なんとなく目に浮かぶ。


「はるかさんとみちるさんは?」


美奈子が尋ねた。
テーブルにあかりのではないメイクポーチと差し入れが置いてあることから、はるかとみちるが既に来ていることを予想したのだ。


『ああ、二人なら外に出てったよ。
うさぎ達が来るだろうからって』


そこの差し入れも、うさぎ達と食べたら良いんじゃない?とはるかが買ってきてくれたものだ。
因みに、中身は某有名菓子店のプリン。


「こっちのメイクポーチはみちるさんのじゃないの?」

『それは相田さんがあたしにって置いてったのよ…』


相田とは、あかりの尊敬しているピアニストのこと。
彼女はあかりのファンでもあるため、コンサートを開いたあかりにお祝いの品として置いてったのだ。

まぁ、普段メイクなんかしないからね…

因みに、彼女こそあかりがラジオに出るきっかけを作った張本人である。


「ほー、凄いわねー」

「ねー」


うさぎの言葉に、ちびちびが続けた。
うさぎの視線は既にはるかの持ってきた差し入れに向けられていた。
あかりは苦笑すると、「食べよっか」と提案した。
椅子に腰掛け、はるかの持ってきてくれたプリンを皆に渡す。
うさぎがかなり嬉しそうにしてた。


「そういえば、外凄かったわよ。
テレビ局とかもいっぱい来てたし」


美奈子の言葉に、あかりは苦笑した。

予想はしていたけど、やっぱり来たのか、テレビ局。
まぁ既に取材したいと何人か来ていたのだけど。


『まぁ、ずっと応じてこなかったからね。
ある意味、当然かも…』


初コンサートだからね。
注目を浴びてから10年以上経つのだ。
そりゃ人もいっぱい来るだろうよ。
お忍びでMr.Garayanも来ると言っていたし、吉川や佐々木姉妹、相田…
他にも沢山の人からお祝いのメッセージを貰っている。
既に、楽屋の奥には貰った花や差し入れがずらーり。
つか、あかりも把握してない。


「ってか、スリーライツは来ないの?」


まことの疑問に、あかり以外の全員が「あ…」と声を漏らした。

スリーライツ…
特に星野はあかりの彼氏。
だが、開場時間は過ぎ、既に開演20分前だと言うのに彼らは来ていない。


「星野の奴、あかりのコンサートに来ないつもり!?」

『いや、多分…』

「わりっ、遅れた!」


うさぎが怒り、それを説明しようとしたあかりを遮るように扉が開き、星野が入ってきた。
後ろには夜天と大気の姿もある。


「星野、ちょっと遅いんじゃない?」

「い、色々あったんだよ…!(汗)」


ゼーハーと荒い呼吸をする星野。
後ろの二人も疲れた顔をしている。
あかりは苦笑すると、三人に水を渡した。


『ファンの子達に見付かったんでしょ?』

「大変だったんだからね…」


夜天の疲れきった表情に、思わず笑ってしまった。
彼らが遅れるなんてかんがえにくいから、もしかしたら…と思っていたのだ。
今日は報道陣もいたから、あまり騒ぎにならないようにするのは大変だっただろう。








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