星の道しるべ

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球技大会…
それは、運動が得意な子には嬉しい行事。
でも苦手な子にとっては嬉しくもなんともない行事。

あかりは河原でソフトボールの練習をするうさぎと星野を見て、苦笑した。
うさぎは昔から運動がそんなに得意ではない。
そんなうさぎが選んだのはソフトボール。
本人凄く嫌がってたけど、星野が聞かなかった。

因みに、あかりは桐山と約束してしまったコンサートが近いため、指を怪我しないように欠席。
コンサートがあると言ったら、先生もOK出してくれたし。

そう言えば、コンサートのことはテレビやラジオでかなり宣伝された。
ポスターもあるし。この前テレビでもコンサートの宣伝がされていた。
あるラジオでは桐山は「2年も粘って、やっと実現できた」とコメントしていたし。
頼むから、あまり大々的にはしてほしくない。
名前は知れ渡り、あかりは最近変装が面倒になっていた。
その為、最近はあまりしていない。
するのは眼鏡をかけるくらい。
服まで一々変えてられない、と半分諦めも入ってる。

話は脱線したが、コンサートのためあかりは球技大会には不参加。
本番はうさぎの勇姿をみていてあげようと思っていた。
星野はソフトボールで優勝を狙っていて、ソフトボールが苦手なうさぎを猛特訓中。
そのスパルタさに、止めるように言ったのだが…
あかりでもこの状態の星野は止められなかった。
ごめんね、とうさぎに何度謝ったことか。
すると、突然高い声が響いた。


「おーっほほほほほほほほ!」


その声に顔を上げれば、豪勢な旗を立てた生徒の群れ。

ってか、なんか怖いんだけど…


「その程度の実力で星野様と優勝を目指そうなど、ちゃんちゃらおかしいですわ!」


まぁ、確かにうさぎの実力は酷いものだった。
星野のノックをまだ一度も取れておらず、座り込むうさぎの回りには沢山のボール。
生徒の群れのリーダーらしき女子生徒は、スリーライツのファンクラブの会員番号No.1らしい。
あかりに言わせれば、会員番号が早いから偉いわけではないと思う。
彼女の行動に不快感を感じ、あかりは眉を寄せた。

星野達を想ってるんだか想ってないんだかわかんない発言をし、彼女達の身勝手さに星野が怒りだした。


「お前達、今はプライベートだぞ!」

「出すぎたマネだということは存じ上げております」


とかなんとか言いながら、彼女達はあかりとうさぎを睨んでいた。
明らかに嫉妬だろう。


「しかし、私達には許せないのです。
ちょろちょろうるさい、その女達が!」


彼女が指差した先はうさぎ。
そしてあかり。
あかりはため息をつき、うさぎはムッとして彼女に言い返した。


「なぁによ!
あたしにはね、星野なんかよりずっと素敵なボーイフレンドが居るのよ!」

「星野様より素敵…?」


レイと美奈子はうさぎを慌てて押さえつけた。

そうね。
彼女達を刺激したら危険そうだもん。

あかりはレイと美奈子の対応に納得した。
だって、ああいう人は怒ると何をするかわかったもんじゃないから。


「私達も、星野様に素敵な恋人ができるのなら喜んで見守りましょう。
しかし、よりによってそんなサル女を…」


うさぎを見て言った彼女に、プッツンと切れる音がした。


「誰がサルじゃー!!」


うさぎが叫ぶのが聞こえるなか、あかりはニッコリと彼女を見た。
それを見たうさぎや美奈子達は顔を青くした。

あかりが、キレた…


『申し訳ないんだけど、どうもスッキリしないから言わせていただくわね。
あなた達、さっきから…
ウザイ』


笑顔だったのに、急にあかりの目付きが鋭くなり、彼女を睨み付けた。


『さっきから黙って聞いてれば言いたい放題言ってくれるわね。
スリーライツのファンだかなんだかしらないけど、少しは人間としての常識ってものを身につけたら?』


あかりの言い様に、大気と夜天が目を見開いた。
こんなに怒ってるあかり、前世でだって見たことがない。


「なっ、私達に常識がないと仰るのかしら?」

『あら、自覚がなかったの?
そっちにビックリだわ』


ハンッと鼻で笑い、バカにするように彼女を見るあかり。


『常識を持ってる人が、人のプライベートに首を突っ込むものかしら?
しかも、自分以外の人と仲良くなるのも耐えられなくて、こうして数に頼って攻撃してる。
見てもらう努力もしてないくせに、文句ばっかり。
貴女の言葉、常識に敵っていると思う?』


あかりが目を細めた。
その静かな怒りに、圧力に、彼女は後退りしそうになった。
だが、それを頑張って耐える。


「私達は、スリーライツが本当に好きなんです。
だから嫌なんですわ」

『スリーライツだって人間よ。
彼らにだって心打ち解けられる人が学校にいて何が悪いの?
それが例え女の子でも、貴女達に文句を言う資格なんてないわ』


人間なんだから、気の合う人、気の合わない人はいる。
星野の気の合う人が、たまたまうさぎだっただけ。


『貴女達は、スリーライツとして見てるだけで、彼らを人として見てる訳じゃない。
だからそんな相手のことを思いやらない言葉を言えるのよ』


人として見ているなら、会員番号の自慢なんて必要ないし、そんな沢山の生徒を従える必要だってない。
スリーライツをスリーライツというアイドルとしてだけしか、見ていない証拠。


『貴女達は人としての常識も持ってない。
彼らを人としてちゃんと見てない。
人の痛みがわからない…
あたしの言ってる意味、わかるかしら?』


人は人としての常識で仲を保つ。
ちゃんとその人自身を見つめ、知ること。
それは人間関係を作る上で大切なこと。
そして人の痛みがわからなければ、人はみんな離れていく。


『今の貴女達、人として最低よ』


低く、冷たく言い放った。
それに、彼女達は一歩後退った。


「な、んなんですの…!
偉そうなこと言って!
貴女は、星野様のなんなんですの!?」

『あたしは「あかりは、俺の彼女だ」


あかりの言葉を、星野が遮った。
星野の言葉に、彼女の表情に怒りの色が浮かび上がる。


「こんな子が星野様の彼女だなんて認めませんわ!
星野様に相応しくない!!
こんな女…!」

「なっ…!」


言い返そうとした星野を、あかりが目で制した。
あかりの瞳を見て、星野は口を閉じる。
あかりは彼女に目を向けると、口を開いた。


『あたしのことを悪く言うのは構わない。
貴女みたいな人に何言われても気にならないからね』


でも、とあかりは続けた。
目を細め、冷たい視線を彼女に向ける。


『星野達や、あたしの大切な幼馴染みを悪く言うのだけは許さない』


自分のことは色々言えば良い。
悪口でも噂でも、虐めでも、好きにしろ。
だけど、星野達やうさぎは関係ない。
その人達を巻き込んだから、あかりは黙っていない。
倍にして返してやる。

あかりを見て怯む彼女。
だが、キッとあかりを睨み返した。
そんな彼女の態度に呆れつつ、星野は口を開いた。


「どうすれば気が済むんだ?」

「正々堂々、試合で決めるというのはいかがですか?」

「試合?」

「今度の試合、私達が優勝したらその女とは縁を切ってください」


明らかにあかりを見ている彼女。

本当、こういう人は自分の最も大切なものを失って始めて気づくのだ。
自分の愚かさに。


「俺達が優勝したら?」


星野が睨むように彼女を見て聞くと、彼女は真剣な目で星野を見た。


「その時は、お二人の交際を認めましょう」


その答えに、あかりはバカらしいと息を吐いた。

別にあんな奴に認めてもらおうとは思ってない。
ってか、何様のつもりだ。


「いいだろう…
その勝負、買った!」

「交渉成立ですわね。
それでは、試合当日を楽しみに…」


彼女はそう言うと去っていった。








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