星の道しるべ

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「あかり!」


呼ばれて振り返れば、そこには星野の姿。


『星野?
どうしたの、こんなとこで。
仕事は?』

「今日はオフなんだよ」


サングラスをかけて変装している星野。

いつも思うけど、よくバレないよね。


「あかり、どっか行くのか?」

『暇だったから、買い物でも行こうかなって思ったのよ』

「じゃあお団子達と行く訳じゃないんだな?」

『うん、そうだよ?』


あかりは星野の言葉に首を傾げながら言った。
星野はニッと笑うと、あかりの手を掴んだ。


「なら、俺に付き合えよ」

『え、ちょっ、星野!?』


返事をする暇もなく、歩き出した星野。
もうこうなったら止められない、と知っているあかりは苦笑して星野の隣を歩いた。

何だか嬉しい。
隣を歩く星野を盗み見て、あかりは小さく笑った。

今日、恋愛運絶好調だったもんなぁー。

普段は占いなんて信じてないけれど、意外と当たるものなんだな、あの星座占い。とあかりは心の中で笑う。


「ねぇ、あれピアニストのあかりさんじゃないの?」

「あ、本当だ。
声かける?」

『(げ、しまった…(汗))』


女の子達のそんな声が聞こえて、あかりは顔を引き吊らせた。
そう言えば忘れがちではあるが、あかりはピアニスト。
5歳から全国大会で優勝10回連続記録を持つ、音楽界で大注目を浴びている身。
高校生活を楽しみたいがためにテレビや取材、コンサートなどの依頼は断っているが、優勝してしまえば嫌でもテレビや雑誌で報道はされる。
星野と同じく、名前は知れ渡っている有名人だったのだ。


「あかり、走るぞ」

『うん(汗)』


星野も気付き、二人は一斉に走り出した。






あかりと星野は大きなデパートに逃げ込んだ。

ああもう、何で夏に猛ダッシュしなくちゃいけないんだ。


「お前も有名人だな、あかり」

『普段はそうでもないから、油断してたわ…(汗)』


そう、普段はあまり言われない。
やっぱり星野達と違って大々的に活動してるわけじゃないし、ピアノなんて知らない人の方が多いだろう。


『つい最近、コンクールで優勝したのがテレビで流れたから、でしょうね…』


コンクールで優勝すればテレビに映る。
だから名前が知れ渡る。
いつもはコンクールの後は暫く変装して誤魔化すのだが、忘れていた。


『はぁ…
星野、ちょっと待ってて』


あかりはそう言うと、その場に星野を残してどこかに行った。
付いていこうと思ったが、あかりから「また見付かったら星野もバレちゃうかもしれないでしょ」と言われて断られた。





それから約15分…


「おせぇ…」


どうしたんだろう、とちょっと不安になってきた。
まさか、また追いかけられてたりして…
もしくは、変な男に…
嫌な考えが頭をよぎる。
いやいや、あかりの身体能力を考えれば、そこら辺の男なんて…


『何一人で百面相してるのよ?』

「あ、あかりおそ……
どちら様?」

『失礼ね(汗)』


顔を上げた星野は目を見開いて固まった。
そこにいたのは、黒いキャップを被り、リボン付きのキャミソールに黒のヒラヒラミニスカートを着こなしたあかりだった。
しかも、髪はポニーテール。


「え、ちょ、あかり?」

『他に誰がいるの?』

「だって服…」

『今買ってきたの』


あかりはさっきまで淡いピンク色のミニワンピに白色のふんわりとしたスカートを重ね着していた。
が、さっきと180度違うあかりの今の服装。


『あたし、普段はあんまりこういう格好しないから、テレビで注目された時とかはこういう格好するのよ。
だとバレないからね』


ま、変装よ変装。
と言ってあかりは笑った。
そんないつもと違うあかりの雰囲気に、星野は顔を赤くした。


『星野?』


何も言わなくなった星野を心配して、あかりは星野を覗き込む。
すると、星野はあかりの頭を優しく撫でた。


「似合ってる」


その一言にあかりは目を見開き、赤くなった。

あーもう、だから期待させるようなことを言わないでって…


「行こうぜ」


星野に手を引かれて、あかりは再び歩き出した。











『時間過ぎるのはあっという間ねー』


背伸びしながら、あかりは言った。

時刻はすでに6時。
あの後デパートで遊びまくったあかりと星野。
お互いに欲しかった服や靴、日用品を買ったり、ゲーセンで遊んだり。
気が付いたら6時で。
あかりと星野は並んで歩いていた。


「つーか、俺はあかりが「流れ星へ」を弾けることにビックリしたよ」

『あはは』


そう、実はあかり、スリーライツの「流れ星へ」を弾けるのだ。

デパートにあった音楽の専門店。
そこには大きなグランドピアノがあって、それを見た星野が「弾いてくれ」と頼んだのだ。
あかりの演奏をまだ一度も聴いたことがなかったため、一度で良いから聴いてみたかった。
あかりは苦笑して「しょうがないなぁ」なんて言い、スリーライツの「流れ星へ」を弾いてくれた。
途中そのあまりに綺麗な音色に「天才ピアニストの陽向あかり」だとバレそうになった時は焦ったけど。


「でも、「流れ星へ」の楽譜なんてあったっけ?」

『耳コピよ、耳コピ。
スリーライツの歌声が好きだって、前に言ったでしょ?
何回も聴いてるうちに、覚えちゃったのよ』


だから弾けるの、とあかりは笑った。

流石、絶対音感の持ち主。

因みに、あかりも「流れ星へ」を弾いたのは初めてらしい。
それであんなに綺麗な音色を奏でられるのだから、凄いと思った。


「きゃああああああっ!!」

『!?』








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