星の道しるべ

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夏休みに入り、あかり達は今から人里離れた湖畔のキャンプへ電車に乗って向かっていた。
美奈子達は皆でババ抜き。
うさぎは…


「ちびちび〜」

「こーら、ちびちび!
危ないからじっとしてなさい!!」

「なさーい」


車内を走り回るちびちびちゃんを追いかけていた。

あの小さい子はちびちび。
突然現れた、とかうさぎは言っていた。

あかりはちびちびを追いかけるうさぎの姿に思わず苦笑した。
ちびうさがいた時も、うさぎはこうやって面倒見てたっけ。
いや、あれは喧嘩に近いけど。


「突然、ちびちびちゃんを頼まれるなんて、うさぎちゃんも可哀相ね〜」

「せっかくのキャンプもうさぎは子守しに行くようなものね」


確かに、なんて思ってしまったのは仕方がない。
あかりはまた苦笑した。


「あたしは絶対、ひと夏のロマンス!
避暑地の男を探すわよ〜」


美奈子の輝く瞳に、思わず引いてしまった。
まったく。
相変わらずのミーハーなんだから。


「レイちゃんのオススメの避暑地だから楽しみだな〜」

「キャンプの近くにレイちゃんの知り合いがいるんでしょう?」

「そう!
親戚のお兄さんなんだけど、陶芸家なの…
会うのは何年振りかなー…
これ、そのお兄さんが作ってくれたものなの」


レイが皆に見せてくれたのは、お兄さんが作ってくれたというペンダント。
綺麗な赤色で、鳥のような形をしている。


「これも粘土で作ったものかい?」

「えぇ」

『綺麗だね』


あかりが言うと、レイは嬉しそうに笑った。
大切なんだろうな、と見てわかった。


「私も良く出来てると思うんだけど、お兄さんに言わせれば失敗作なんだって…」

「「「「えぇ〜!?」」」」

「健吾お兄さん、スランプになると、みーんな壊しちゃうのよね…」

『スランプは一度嵌まると大変だからね』


あかりがしみじみと言うと、亜美が少し驚いたようにあかりを見た。


「あかりちゃんにもスランプがあるの?」

『そりゃ勿論。
自分の思ってる音色が奏でられない時なんて、よくあるのよ』


そう言う時、あかりは一度ピアノから離れる。
しばらくピアノを弾かないでいるのだ。
しばらくすると自然と弾きたくなるから。
それが、あかりのスランプから抜け出す合図。


「ちびちび〜」

「お弁当、お茶、コーヒーに…」


ウエイトレスさんが通る。
それを見て、あかりは何かに気が付いたようにうさぎを見た。


「こらー、ちびちび待ちなさい!」

『ま、待ってうさ「うわあぁぁ!!」

『あぁ…(汗)』


一歩遅かった(汗)
うさぎはウエイトレスさんと激突した。

こうなるって思ったのよ。
うさぎならやると思ったのに…(汗)


「うさぎちゃんは障害スランプよ…」

「「「「うんうん」」」」


美奈子ちゃんの言葉にあかりを覗く全員が頷いた。
あかりはため息をつく。

本当にうさぎは将来大丈夫かしら。
衛も苦労するわよね…


兄のように慕っている彼を思いだし、あかりは苦笑した。


『ちびちびちゃん。
おいで』


あかりがそう言って微笑むと、ちびちびはニッコリと笑ってあかりの膝の上に座った。

うん、可愛い。


『うさぎ、あたしがちびちびちゃんの面倒見るよ』

「え、でも…」

『大丈夫よ。
あたし子供好きだし。
知ってるでしょ?』


そう、あかりは子供が大好きなのだ。
前、うさぎと衛の子供であるちびうさが来た時も、ちびうさの面倒の大半はあかりが見ていた。
ちびうさもかなりあかりになついていたし。


『それとも、うさぎはあたしから楽しみ奪っちゃうの?』


そう言えば、うさぎは首を横に振った。
うさぎのことだから、きっとそういう反応をしてくれるとわかっていたあかりはクスクスと笑った。


『せっかくのキャンプなんだから、久々に息抜きしなよ。
ね?』


「うー、あかり大好きっ!
ありがとう!!」


抱き付いてきたうさぎを何とか宥め、あかりはちびちびを抱き上げると通路を挟んだ向こうの席に移動した。
ちびちびと外を見ながら笑うあかりは、まさにお母さん。


「ほーんと、あかりちゃんってこういうところ大人よね」

「そーよね。
うさぎとは大違い」

「う、否定できない(汗)」


レイの言葉に反論しようにも事実なので反論出来ないうさぎ。
それを見てクスクス笑う亜美。


「一番この中で幼く見えるんだけどね」


まことの言葉に、皆はあかりを見た。

確かに幼い。
あかりは身長がこの中じゃ一番小さいし、何より童顔なのだ。


「でも、童顔だからこそあかりちゃんは良いのよ!
そこが可愛いんだもん」

「美奈子ちゃん、気が合う!」


美奈子の言葉にうさぎが乗る。
美奈子もあかりが大好きなのだ。


『うさぎ、美奈子、あんた達ねぇ…』


童顔であることを気にしているあかりは、恨めしそうに美奈子とうさぎを睨んだ。








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