星の道しるべ

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「入るよ、みちる」


はるかはそう言うと、ノックもせずにドアを開けた。
まぁ、これがいつものはるかとみちるのやり取りだから良いのだけれど、このときばかりはノックしとけば良かったと思った。
中には星野がいたのだ。


『星野?』

「あかり、お団子。
へぇー、良い男連れてんじゃん」


良い男…?とあかりは首を傾げる。

男の人なんて…

あ、とあかりははるかを見てため息をついた。


「失礼ね!
はるかさんは「私の大切な人よ」


うさぎの言葉をみちるが遮った。
みちる、そこは遮らなくても…とあかりは心の中で呟く。


「へぇー、人が悪いな、みちるさんも。
星野光です、よろしく」

「……天王はるかだ、よろしく」


そう言って星野の差し出した手にはるかも手を差し出した。
その瞬間、はるかは差し出した手を握り、星野の腹に向けた。
間一髪でそれに気付いた星野が、はるかの拳を差し出した手で受け止めた。


「ご挨拶だな」

「出ていけ」


はるかの低い声に、星野は少しだけ笑うと出て行こうとした。


「それじゃあ、みちるさん。
お疲れ様でした。
後で顔だせよ、あかり。
と、お団子」

「ちょ、あたしはおまけなわけ!?」

『うさぎ…(汗)』


うさぎを宥め、あかりは苦笑した。


「あんな奴、楽屋に入れない方がいい」

「あら、妬いてくれてるの?」

『ちょっと、ラブラブならあたし達がいない時にして(汗)』


あかりがそう言うと、はるかは苦笑し、みちるはふわりと微笑んだ。

あかりはチラリと星野の出て行った扉を見つめ、はるかに申し訳なさそうに眉を下げた。


『ごめんね、はるか。
あの人、失礼なとこもあるけど根はいい人なのよ。
許してあげてね?』

「あかり…」


大事な娘(?)にそう言われ、はるかは少しだけ困った顔をした。

はるかが星野を気に入らないのはわかっているが、あかりにとっては星野も大切な友達。
父親みたいに自分を可愛がってくれているはるかに、星野が嫌われるのはなんだか嫌だった。


「はるかは人見知りするのよ。
それよりいいの?
行ってあげなくて」

『みちる、ありがとう。
うさぎ行こ』

「うんっ」


あかりとうさぎはみちるの楽屋を出ると、星野の後を追った。
暫くすると、見慣れた長い黒髪を見つけて、うさぎと走り寄る。


『星野!』

「あんたねぇ〜…」

「色男の方はもういいのか?」


あ、やっぱりはるかを男だと思ってる…

あかりは苦笑した。


「あのねぇ〜…
はるかさんは女の人なんです!」

『そうだよ、星野。
それに、星野だってあたし達が来なかったら何してたか』

「そーよそーよ」


うさぎの後に言ったあかりの言葉に、星野は頬を染めた。


「な、何もしねーよ!」

『何赤くなってんのよ』


図星だったのだろうか。


「まっ、あんたみたいなお子ちゃまをみちるさんが相手にするとは思えないけど〜」


歩きながら言ううさぎの隣を、あかりも歩く。

まぁ、みちるが星野に恋をするとは思えないけど。
お子様だからとかじゃなくて。


「失礼な…
だいたい お前はあの二人とどういう関係なわけ?」

「気になる?」


振り返ったうさぎに、星野は少しだけ戸惑った。
あかりは振り返りはしなかったが、そっと優しく微笑んだ。


「大切な人よ」


うさぎは優しく微笑むとそう言った。

本当、うさぎは優しい。
こういう所は、うさぎの良いところ。
輝いているところ。


「全く、お前らの周りには不思議な輝きが集まるな…」

『星野…?』


何を言ってるの?

そう尋ねようとして、あかりの疑問はうさぎの声に消された。
そこには階段から落ちそうになっているうさぎの姿。

そうだ、忘れてた。
うさぎなら絶対やると思ってたのに…!!


「へっ、えぇ〜!?」

『うさぎっ!』


突然すぎて反応できなかった。
咄嗟に手を伸ばしはしたが、その手はうさぎを掴むことなく宙を切った。
すると、うさぎは下から上がってきていた老人と頭を激突。

なんて器用な…


「お団子っ、大丈夫か!?」

『うさぎ!(汗)』


あかりと星野はうさぎに手を伸ばしたが間に合わず、うさぎは老人と一緒に落ちていった。

あああ、だからいつも前を見て歩きなさいって言ってたのに…!

あかりは頭を抱えたい衝動にかられた。


「ごめんなさいぃ…」

「あぁ…
お嬢ちゃんこそ大丈夫ですか?」


目を回したうさぎが体を起こしながら謝ると、老人はゆっくりと起き上がり、うさぎの心配をしてくれた。
取り敢えず大きな怪我はなかったようで、あかりはホッと息をついた。


「Mr.Garayan!」

『え?』


星野の声によく老人を見れば、確かに彼は有名な指揮者、Mr.Garayanだった。
あかりと星野は慌てて階段下まで行き、あかりはうさぎを、星野はMr.Garayanを助け起こした。


「大丈夫ですか?」

「ありがとう」

『申し訳ありませんでした、Mr.Garayan』


あかりが謝ると、Mr.Garayanは「気にしないでください」と言って笑った。


「知り合いなの?」


うさぎがキョトンとしながら言ったので、あかりは苦笑した。

そうだった。
この子はコンサートに間に合わなくて、Mr.Garayanが指揮をしていたのを知らなかったんだった。


「お前、知らないのかぁ?
Mr.Garayanの事」

「ミスターがらぱん…?」

『あはははっ』


星野が呆れながら言った言葉を、うさぎがいつものボケ(天然)で返した。
それについ笑ってしまったあかり。


「お前、失礼だぞ!」

『Mr.Garayanよ、うさぎ』


あかりが訂正するが、うさぎはいまいちよくわかっていないのか、キョトンとしてしまった。
そんなうさぎを見て、Mr.Garayanが笑った。







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