星の道しるべ
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『みちる、あれうさぎ達じゃない?』
ピアノの帰り、みちるとはるかに会った。
二人はスリーライツとみちるのジョイントコンサートのチケットをうさぎ達に渡しに行く途中だったらしい。
あかりもうさぎ達の所に行こうと思っていたため、みちるとはるかに同行した。
そんな時あかりはみちるに声をかけた。
目を向ければ、確かにそこにはうさぎ達。
公衆電話で何をしてるんだろう、と思ったがすぐに気付いた。
多分、スリーライツのコンサートのチケットを取ろうとしてるのだ。
あかりは苦笑すると、うさぎ達に近付いた。
「やだやだやだやだぁー!!」
「…子供じゃないんだから」
『そーよ、美奈子』
「!!
あかりー!」
うさぎが抱き付き、あかりは苦笑しながらうさぎの頭を撫でる。
とは言っても、うさぎの方が背が高いから少しだけ背伸びしなくちゃいけないんだけど。
「あかりちゃんどうしたの?
今日はピアノのレッスンじゃ…」
『もう終わったの。
それに、レッスンって言っても、ただピアノ貸しきって弾いてるだけだし』
そう、実はあかりはピアノを習っているわけではないのだ。
そりゃ最初の頃は習っていたけど、ピアノは2年習ってやめた。
自分のペースで弾く方があかりの上達ペースが早かったからだ。
まぁ、他にも理由はあるけど。
「ごきげんよう」
鈴のような声に振り返ると、そこにはみちるとはるかの姿。
あかりはクスリと笑った。
「あなた達のお目当てのチケットってこれのことかしら?」
可愛くウィンクを決めてファンタスティック国際音楽祭のチケットを取り出したみちるに、うさぎ達は目を見開いた。
そんな皆の姿を見て、あかりはクスクスと笑った。
場所をクラウンへと移したあかりは、うさぎの隣に座り、チケットを見てプルプルと震えるうさぎに吹いた。
美奈子とレイなんて頬擦りしてキスまでしてるし。
そんなに嬉しいのか。
まぁ、二人ともミーハーだし、スリーライツのファンクラブ会員だから当たり前か。
「でもなんで、みちるさんがチケットを?」
「しかも招待券なんて…」
『え?
知らないの?』
あかりが目を見開いた。
ちょっとビックリした。
あかりは美奈子に「雑誌、よく見なよ」と言った。
美奈子は言われた通りに雑誌を見て、驚きの声をあげた。
「ええー!?」
「スリーライツ、海王みちる、ジョイントコンサート!?」
レイがその雑誌のページのサブタイトルを読み上げた。
うん、本当に知らなかったのね。
あかりは全員の反応に苦笑した。
「すごいわねー。
で、ジョイントコンサートって何?」
うさぎの呟きに、ジュースを吹きそうになった。
この子は…
なんでこうこんなにも無知なんだ。
幼馴染みとして、あかりはうさぎの将来が本気で心配になった。
「あんたいったい何に感心してたのよ…」
「ジョイントコンサートって言うのは、ライブとかで一緒に演奏したりすることを言うのよ」
「スリーライツとみちるさんが?」
「「「「うんうん」」」」
「一緒に演奏しちゃうの?」
「「「「そうよ!」」」」
「ノリノリで!?」
「「「「もう、ノリノリよ!」」」」
「そりゃすごいわ」
「「「「それはすごいわよ」」」」
思わず拍手送りそうになった。
あかりは苦笑すると、飲みかけだったジュースに口をつけた。
『やっぱり、現地集合になんてしない方が良かったわね…(汗)』
あかりはボソリと呟いた。
時刻は既に夜。
スリーライツとみちるのジョイントコンサートは、大盛り上がりで終わった。
レイ達も楽しんでたし、自分もみちるの演奏やスリーライツの歌声は聴いていて良かった。
黄色い声はちょっと煩かったけど。
まぁそこは問題ではない。
そう、問題ではないのだ。
一番の問題は、うさぎが来なかったってこと。
今日のライブは現地集合だった。
まぁうさぎも高校生なんだし、大丈夫だろう。
そう思ったのが間違いだった。
ギリギリまで待ったけどうさぎは来なくて、結局ライブが終わってもうさぎの姿はなかった。
これは、バスをのり間違えたな…
あかりは相変わらずなうさぎにため息をついた。
本当に、困った子なんだから(汗)
「あかりも大変だな」
『他人事だと思ってぇ〜』
ははは、と笑うはるかをあかりは少しだけ睨んだ。
今からあかりははるかとみちるの楽屋に行くのだ。
『って、うさぎ?』
あかりは前方…
柵から身を乗り出していたうさぎを見付けた。
はるかと顔を見合わせ、うさぎの背後に立つ。
「遅いぞ、皆心配して「はるかさん!」
はるかの言葉を遮るうさぎ。
その目はかなり潤んでいた。
「終わっちゃったのね……」
めちゃくちゃ泣いてるうさぎに、はるかは驚く。
そんなうさぎに、あかりも若干引き気味。
「あ、あぁ…」
「うわーーん!
やだやだやだ!!」
『う、うさぎ…(汗)』
泣き喚くうさぎ。
もうどうしたらいいのかわからず、あかりは立ち尽くす。
はるかに目で「なんとかして」と伝えれば、はるかも困った顔をした。
だって、この状態のうさぎはお手上げなのよ…
「なあ、これからみちるの楽屋に行くんだけど、一緒に来るか?」
はるかに言われて、うさぎはピタッ泣き止み、そしてはるかの腕に抱き着いた。
「うん」
『はるか、本当にごめん(汗)』
「い、いや、別に…(汗)」
もう頭抱えたくなる。
あかりは今度からは自分がうさぎと一緒に行こうと、強く決意したのだった。
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