星の道しるべ

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「星野、行くよ」


夜天に言われて、星野は振り返った。
手に持っていた二つのチャームのついたブレスレットを、星野は左手首につける。
その姿を見て、夜天と大気が眉を寄せる。


「星野…」

「大丈夫だ。
ただ…
夢を見たんだよ」


あいつが、笑ってる夢を。
星野と、名前を呼んでくれる夢を。

キラリと輝く赤と薄ピンクの宝石。
星野はそのブレスレットを日の光にかざし、ピンクの宝石に口付けた。


「必ず、見付け出してやるんだ」

「…そうだね。
見付けよう。
僕達の、もう一人のプリンセスを…」

「あの子は、寂しがりやですからね」

「ああ」


あの子は、笑ってくれるだろうか。
また、名前を呼んでくれるだろうか。
会ったら、抱き締めてあげたい。


「行くか」


約束してね、星野…




届け、俺達の想い…














「………」


学校に行って、星野は少し驚いた。
そこにはいつもよりご機嫌なうさぎがいたのだ。
鼻歌まで歌い、かなり機嫌がいいのが分かる。


「よぉ、お団子」

「おはよ、星野」


いつもみたいに頭に腕を置いたりしてみたが、うさぎは気にしてないのか笑顔で挨拶を返してきた。
流石に星野もそれには引いてしまい、夜天や大気も眉を寄せた。

正直、気持ち悪い。


「き、今日、何かあるのか?」

「うんっ!」


そう尋ねれば、満面の笑みのうさぎ。

一体何事だ。

すると、それを見て呆れた美奈子、まこと、亜美が星野達に近付いた。


「今日、うさぎちゃんの幼馴染みが帰ってくるのよ」

「幼馴染み?」

「そう。
うさぎちゃんはその幼馴染みが大好きなんだよ」


美奈子の言葉に大気が尋ねれば、まことが笑って言った。


「うさぎちゃん、あかりちゃんはいつこっちに来るの?」

「んーっとね、お昼休みには学校来るって♪」


亜美が尋ねれば、笑顔でうさぎが答えた。
どうやら、その幼馴染みの名前はあかりというらしい。
そんなに嬉しそうにするってことは、本当にその幼馴染みが大好きなのだろう。
星野は笑うと、自分の席に座った。

少しだけ、少しだけ、うさぎが羨ましく思ってしまった。
自分は、会いたくても会えない。
どこにいるかもわからない大切なプリンセスと、あの少女…

ブレスレットを見つめた星野を見て、夜天と大気は目を伏せた。











お昼、珍しくうさぎ達は教室で食べていた。
なんでも、教室で食べていればあかりが来た時にわかるから、だとか。
今日ずっとニコニコしてたうさぎは、お昼もかなりご機嫌。
楽しみで仕方がないらしい。


「あっ!!」


突然立ち上がったうさぎに目を向けると、うさぎは外を見て顔を輝かせた。


「あかりだっ!!」

「あっ、ちょ、うさぎちゃんっ」

「うさぎちゃーん(汗)」

「はやっ(汗)」


駆けていくうさぎに、その後を追う美奈子達。
星野はその姿に苦笑すると、立ち上がった。


「俺達も行ってみねぇか?」

「何で僕達まで…」

「面白そーじゃん。な?」


笑顔を浮かべる星野に、大気はやれやれと肩を落とした。
そんな大気を見て、夜天も諦めたように立ち上がる。


「(そんな顔で言われたら、仕方がないよね…)」


無理矢理笑ってるのが丸わかりだ。
大気も、それに気付いていた。

夜天は自分のブレスレットを見つめ、太陽に目を向けた。


「早く帰ってきてあげなよ、マリナ…」


その呟きを聞き取ったのは、隣にいた大気だけだった。












久々の学校。


「あかり、気を付けて行くんだよ」

『わかってる。
送ってくれてありがとう、はるか』


あかりははるかにお礼を言って手を降ると、はるかも手を振り返して去っていった。

過保護なんだから、と苦笑して歩き出す。
すると、見慣れたお団子ヘアーの女の子がこちらに走ってくるのが見えて、あかりはまた苦笑した。


「あかり、おっかえりーー!!」


勢いよく抱き付いてきたうさぎに倒れそうになりながらも何とか耐え、あかりはうさぎに笑顔を向けた。


『ただいま、うさぎ』

「あかりちゃーん」


うさぎを追いかけてきた美奈子達に軽く手を振り、あかりはうさぎを離した。
ちょっと残念そうなうさぎの顔には、思わず笑ってしまった。


「あかりちゃん、おかえり」

『ただいま、美奈子、亜美、まこちゃん』


あかりは笑顔で返すと、4人を見て息をついた。


『取り敢えず、怪我はないみたいだね』


あかりが言うと、美奈子が「大丈夫よ」と笑った。
うさぎは「あかりは大丈夫!?」と抱き付いてきた。
それをなんとか落ち着かせ、あかりは「大丈夫だったよ」と微笑んだ。


「マリナ………?」

『え?』


聞き慣れない声に視線を向ければ、そこには男の子が3人立っていた。


あたし達は、生まれ変わっても巡り会える。
そして、あたしはまた星野に恋をするの。
だから、見付けてね、あたしのこと。
ずっと待ってるから。

約束してね、星野―――………



「マリナっ!」

『っ!』


やっと、やっと会えた――…








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