星の道しるべ

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マリナが、おかしい…


火球やスターライツはため息をついた。

今日はマリナの歓迎パーティーをしようという話になった。
だから今日はメイカーは朝からお菓子作りに励んでいたし、火球は執事やメイドに指示を出して部屋の飾り付けをさせたり、ヒーラーはヒーラーで花を生けていたりしていた。
因みにファイターはマリナが退屈しないように遊び相手として配置されていた。
そこで朝は苦手なファイターではあるが、マリナを起こしてマリナの身仕度を手伝っていたのだ。
やはり、プリンセスの朝はこういう形からスタートするものだし。
そう言えば、マリナの長い髪を櫛でとくのは楽しかった。
少しネコ毛なマリナの長い髪。
触るとフワフワしてて、弄りたくなった。
で、まあその後、本当はマリナを町に連れて行ってあげようと思った。
町なら時間潰せるし、マリナを連れて行ったことなかったし、何より、マリナに何かプレゼントしてあげたいなと考えていたから。
そうすれば、まだ笑顔を見せてはくれないマリナが、笑ってくれるのではないかと思ったから。
だが、身仕度が終わるや否や、マリナは申し訳なさそうに「一人にしてほしい」と言ったのだ。
凄くビックリした。
が、マリナだってそういう時間は必要だ。
昨日の今日だし。
だからマリナの申し出を受け入れた。
そこからはファイターも火球やメイカーやヒーラーの手伝いに向かい、午前中でパーティーの準備を終わらせた。

予定より早かったため、午後は皆で町に行こうという話になった。
昼食を食べようとマリナの部屋にメイカーが言ったが、メイカーは一人で戻ってきた。
慌てて尋ねれば「手が離せないから、いらない」とのこと。
火球が心配してマリナに再度聞きにいったり、ヒーラーがお茶の時間だと呼びにいったりしたが、答えは全て同じで、部屋から顔も出してはくれなかった。

で、そうこうしてる間に只今の時刻は午後5時。
もうパーティーを始めたい。
だって、料理は完成してすでにテーブルに乗ってるし、メイカーのデザートも綺麗に盛られている。
飾り付けだって完璧。
なのに主役であるマリナが来ない。


「マリナ、どうしたのでしょうか…」


呟いた火球の言葉に返せる者はいなかった。
自分達も、原因なんてわからない。
朝からそうだったから。

もしかしたら、自分達を戦いに巻き込んだことを気にしているのだろうか。
解決した話ではあったが、心優しいマリナのことだから、気にしていたとしても不思議ではない。
でも、だからと言ってマリナが自分達と会わないのもおかしいと言えばおかしいのだけれど。

ヒーラーもメイカーもこの時間を楽しみにしていたので、マリナが来ないことに肩を落としている。
それは自分も同じだけど。

すると、突然バンッと扉が開いた。
ビックリして振り返れば、そこには息を切らしたマリナの姿。


「マリナ!」

『あ、えっと、遅れてごめんなさい…』


ファイターが慌ててマリナに寄れば、マリナは戸惑いながらも謝ってきた。
ファイターはそんなマリナの様子に苦笑すると、マリナを見た。


「どうしたの、マリナ?
今日ずっと部屋から出なかったから、あたし達、皆心配してたのよ?」


ファイターがそう優しく言えば、マリナは恥ずかしそうに両手を後ろに隠した。
それに首を傾げるファイター。


『あ、の、ファイター…』

「なぁに?」

『えっと、あの…』


マリナは言いにくいのか、赤くなると俯いた。
マリナが言うのをただ待っていると、マリナは覚悟を決めたのか、後ろに隠した手に持っていた小さな箱をファイターに差し出した。


「え…
あたしに?」


戸惑うファイターに、マリナは頷いた。
少しだけ斜めになってる赤いリボンは、きっとマリナがラッピングしたからだろう。


「ありがとう、マリナ」


微笑んで受け取れば、マリナは恥ずかしそうにヒーラーとメイカーを見た。
ファイターはそれに気付くと立ち上がり、マリナの背中を少しだけ押して上げた。
マリナはファイターを見上げて不安そうな顔をするが、ファイターはただ微笑んでいた。
戸惑いながらもメイカーとヒーラーの所に歩いて行き、黄色のリボンがついている箱をメイカーに、青いリボンがついた箱はヒーラーに渡した。
そして最後に火球の元に行き、マリナは火球にオレンジ色のリボンの箱を渡した。


『あの、あたし…
皆に沢山助けてもらったから。
だから、お礼したくて…
心配かけて、ごめんなさい』


部屋から出なかったことを謝っているのだろう。
マリナのその姿を見て、ファイターは「マリナ」と名前を呼んだ。
振り返ったマリナの元まで行き、マリナの目線に合わせるようにしゃがむ。


「開けても良いかしら?」


コクンと頷くマリナを確認してから、ファイターは箱を開けた。
そこに入っていたのは銀色のブレスレット。
そのブレスレットについている星のチャームは、赤い宝石だった。
それを見た火球が目を見開く。


「これは…
もしかして、ポルトボヌールですか?」


ポルトボヌール?とスターライツが首を傾げた。
ポルトボヌールとは、太陽国の伝統工芸品である石のこと。
クリスタルのような宝石で、幸せを呼ぶお守りとされている。


「しかし、ポルトボヌールは純粋な太陽の輝きを持つ者しか作れず、作るのに手間と時間が必要とされているのです」


太陽国の者は皆、多かれ少なかれ太陽の輝きを持っている。
その中でもより強く、純粋に輝ける光を持つ者だけが作れる。
しかし作るのにも手間と時間がかかり、かなりの精神力を必要とする。
そのため、太陽国でもポルトボヌールを作れる者は少なく、ポルトボヌールは貴重とされてきた。


「マリナ、まさかこれを作っていたのですか…?」


火球の言葉に、マリナはコクンと頷いた。








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