星の道しるべ
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今日も、マリナは外を見ていた。
マリナがここに来て、早三日。
スターライツの3人は、相変わらず、マリナと積極的に接しようとはしない。
いや、それ以前にマリナが部屋から出ないのだ。
火球がお茶に誘ってくれた時はマリナもこの部屋から出るが、それ以外は部屋から出ようともしない。
初めてここに来た時に窓から外に出て以来、マリナは自分から外に出るということをしなくなってしまった。
一日中、窓の横の椅子に腰掛け、そこから見える外の景色を見て過ごす。
声をかけなければ振り向きもしない。
それはまるで人形のようで…
火球は、ここに来てから少しも笑わないマリナを見てとても心配していた。
たった5歳の女の子が、戦いに巻き込まれ、両親と離れ離れなのだから、仕方がないと言えば仕方がないのだが。
だって、5歳と言えば、まだまだ甘えたい年頃なのだから。
そして悩みと言えば、このスターライツの態度。
彼女達が自分を大切にしてくれているのはわかっている。
それは嬉しいし、とても有難い。
だがその一方で自分以外の人には態度が悪くなってしまったり、回りが見えなくなったりしてしまう。
それ故に人を認めることがなく、協力的ではない。
マリナへの態度も、相変わらずだ。
ヒーラーは笑わないマリナに対して色々言っていたし、メイカーも事務的なこと以外はマリナと話をしないし、ファイターに至ってはマリナを監視しているし、マリナの名前すら呼んでいない。
これでは、マリナだって心を開けない。
どうにかしてあげたい…
火球がそう思っていると、不意に扉が叩かれた。
誰かと尋ねれば、宮殿に仕える執事だった。
火球は扉を開けると、執事を見た。
「どうしました?」
「プリンセス宛に、月のクイーンから手紙が…」
「!」
「プリンセス、どうかなさいましたか?」
火球に部屋に呼び出されたスターライツは、火球の表情を見て首を傾げた。
メイカーが火球に尋ねると、火球は少しだけ俯き、口を開いた。
「…太陽国の戦争が終わりました…」
「では、あの子は…」
あの子は、太陽国に、家に帰れる。
3人はそう思った。
だが、火球は首を横に振った。
「太陽国は、滅んでしまいました…」
「では、あの子の両親は…!」
「…………亡くなりました…………」
その一言を言うのに、どれだけの時間がかかっただろうか。
火球は、唇を噛み締めた。
「月のクイーンや太陽系のセーラー戦士によって敵は倒されましたが、太陽国に、生存者は……」
その先は、言えなかった。
こんなの、あんまりだ…
すると突然、ファイターが後ろを振り返った。
「ファイター?」
「………まさか…」
ハッとしたファイターは、火球の部屋を飛び出した。
ファイターが向かった先はマリナの部屋。
マリナの部屋の扉をノックして、ファイターは扉を開けた。
そして目を見開いた。
ファイターを追って来たヒーラー達も目を見開く。
いつもと変わらない部屋。
いつもと同じ、開いた窓。
でも、彼女がいない。
椅子に腰掛けていた、あの幼い少女が…
火球は両手で口を押さえた。
まさか、聞いて…
「っ、捜してきます!」
ファイターは窓から外に飛び出した。
火球はそれに「私達も行きますよ」とヒーラーとメイカーに言い、3人も外に出た。
マリナを探して約20分…
ファイターがマリナを見付けたのは、金木犀の花が咲き乱れる小高い丘だった。
こちらに背を向ける形で、マリナはそこにただ静かに立っていた。
追い付いた火球は、ファイターの一歩前に出る。
「マリナ…
もしかしてさっきの話、聞い『知ってました』
「え…?」
『太陽国が滅んだことも、お父様とお母様が死んだことも、知っていました…』
「どういうことですか?」と尋ねようと口を開くと、マリナが昨日、と続けた。
『昨日、夢を見たんです…
お父様とお母様が、悲しい顔をしながらあたしに「ごめんね」って言うんです…』
真っ暗な空間に、マリナはいた。
そこに現れたのは、大好きな父と母。
二人は悲しそうな顔でマリナを見つめると、「ごめんね」と言った。
マリナが二人に手を伸ばそうとした瞬間、大爆発が起こり、突風が吹き起こる。
それでもマリナは二人に手を伸ばした。
が、突然マリナの足元が崩れ、マリナは闇に落ちていった。
そんな夢…
『信じたくない、けど…
でも、夢じゃないって、本当なんだって、あたしはわかってました…』
本当は、あの日からこうなるってわかっていたのかもしれない。
いや、頭のどっかでは思っていた。
あの日、自分だけが逃げた、あの瞬間から…
「やっと見付けたぜ、太陽国のプリンセス」
『!』
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