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□そうなりますよね
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大きなマンションに着き、臨也のコートのポケットから鍵を取り出しベッドに寝かせた。いかにも高級そうなベッドに眠る臨也の姿はただの綺麗な人形のようで思わず感嘆の声を漏らした。静雄はすることも無くいつもは見れない臨也の寝顔を見つめることにした。大きい瞼の淵を、長い睫毛が覆い影を作る。頬は薄らと赤らんでいて、きっと酒を飲んだんだろう、と予測できる。よく考えればさっきの臨也の突拍子も無い言動はアルコールによるものだろう、と思った。

好きだと言ったのは本当だったのだろうか。もしかしたら酒のせいかもしれない。臨也の事で一喜一憂するとは思わなかった。きっと自分は臨也がすきなのだろう。ともすれば甘くも聞こえるその感情は、今の静雄には憂鬱以外の何物でもなかった。折角自覚した恋心が、即行失恋なんて酷すぎる。ふいに呻き声が聞こえた。静雄は、いつの間にか唸っていたのかと慌てて起こしていないかと臨也を見たが、どうやら呻いているのは臨也の方らしかった。起こしてやった方がいいのかと臨也に手を伸ばすと、咄嗟に臨也にワイシャツの袖を掴まれた。臨也の目は閉じられたままで、どうやら無意識で手を伸ばしたようだった。何かを口に出そうと臨也が口を開く。慌てて静雄が臨也の口元に耳を寄せると、微かに声が聞こえた。


「シズ、ちゃん」


唐突に自分の名前を呼ばれて固まる。これではまるで求められているようだ、と淡い期待が胸を焦がした。臨也、と名前を呼んでやると嬉しそうに一瞬微笑んで再び落ち着いて眠った。魘されたせいか、アルコールのせいか。臨也の首元はうっすらと汗が滲んでいる。そっと触れるとしっとりとした感触が静雄を煽った。少しだけ、と思って触れた指先はどんどんエスカレートしていく。静雄は、臨也の白い首筋に顔を寄せ匂いを嗅いだ。滴り落ちる汗を掬おうと舌で舐めあげる。その間にも手は臨也のインナーの中に進入し、まさぐっていた。いつの間にやら静雄の息は荒くなっていてこれじゃあまるで変態だ、と思った後もう既に行動が変態の域に達している事に気が付いた。


「ん…あっ」


静雄の手が臨也の胸の突起を引っ掻いた瞬間、鼻から抜けたような甘い声が臨也から漏れた。執拗に弄り回すと突起は芯を持ち、黒いインナーを持ち上げる。些細な刺激を与えられるだけで震える身体は、きっと相当に敏感体質なのだろう。いつの間にか臨也の息も荒くなっている。


「シズ、…ちゃん?」


蕩けた目で臨也が静雄を見ていた。臨也の目には、覆いかぶさって身体をまさぐっている静雄はどのように映っているのだろう。不味いと分かりつつも焼け切れた理性はストッパーの役目を果たさない。身体をまさぐる手は、ついにベルトを引きちぎるようにして外し、ズボンを引き下げた。下着越しにゆるく起き上がった性器を撫でる。状況を理解できていない臨也が小さく喘いだ。


「あっ、あ…だ、め…!」


臨也が若干我に返ったように拒絶する。震えて力の入っていない手で静雄の腕をどけようと、爪を立てた。その抵抗は静雄にとっては赤子同然のものだったが、自分の固い皮膚で臨也の爪が欠けてはいけない、と臨也の身体を反転させ後ろ手にその辺りに落ちてたタオルでゆるやかに拘束した。腰だけを高く上げさせるという成人男性がとるポーズとしては、いささか恥辱にまみれたものだったが臨也は次々に襲いくるあまりに現実離れした状況についていく事が出来なかった。下着を引き下げ、白い臀部に手をかける。乾いたままの小さな其処に押し込めば、無事では済まない事くらいは初体験の静雄でも分かっていた。割り開いた其処はアルコールによる熱のせいか赤く熟れていて、静雄の熱情を酷く煽る。いっそこのまま何も考えずに突き入れてしまいたくなる衝動を必死に抑え込み、小さな秘孔に舌を差し入れた。


「う、わあぁ! 汚いから、止めて!」


あまり上手く回っていない舌で、必死に静雄を思いとどまらせようと脚をバタつかせた。涙目で顔をこれ以上無いって位に真っ赤にした臨也からは娼婦染みた雰囲気は感じ取れなかった。静雄は、臨也の予想以上に初心な反応に愛撫の手は止めないながらも内心酷く狼狽していた。まさか、と思いつつも意識も曖昧な臨也に問いかける。


「…なぁ、まさか初めてって事は、無いよな…?」


静雄の言葉を理解するまでに数十秒の時間を要した。静雄は臨也のその沈黙の意味も分からず、ただごくりと唾を飲み込む。その瞬間臨也の瞳からとてつもない勢いで涙が溢れ出した。静雄は慌てて臨也の身体を引っ繰り返し、止まる気配の無い涙を唇で掬ってみたりとなんとか宥めようとするも、臨也の涙はどんどん勢いを増していく。嗚咽交じりに臨也が言葉を紡ぎだした。


「ひど…そ、んなこと有るわけない! なんで、っう、そんな、そんなの」


大半が意味を成さない言葉ばかりだったが、はっきり大切な事だけは伝わった。臨也に経験は無かったのだ。呆ける静雄をよそに、臨也はなおも喋り続ける。静雄にとって聞き捨てならない事実まで。


「おれだって、好きでセクハラされたわけじゃ…なっ…!」


空気が完全に凍りついたが、泣きじゃくる臨也は気が付かない。静雄が臨也の肩を勢いよく掴む。加減が上手く出来ていなかったようで、いたい、と臨也が呟いて外そうとした。静雄はそんな臨也を気遣う事も出来ずに、今の言葉の真相を求めたら臨也がまた口を開いた。


「おれには怒ったかおしかみせない、くせに… 仕事の人たちには笑って…、おれセクハラとかすごくやだったのに、シズちゃんはわらって、他の人と…、…もういい…」


終いには顔を背けて泣き出してしまった。静雄は臨也の本心の吐露を一語一句聞き漏らすまいと耳を傾けていたため、その爆撃の衝撃も大きかった。顔が火照って仕方が無い。恐る恐る臨也に手を触れ、問いかける。


「お前、俺の事が好きなのか」


静雄の言葉に臨也がゆっくりと顔を上げる。泣き腫らした目は薄く腫れていたがそれすらも綺麗に見えるのは、臨也の顔がいいからか、惚れた弱みか。臨也がひくひくと喉を震わせて静雄を見据える。


「…さっきも、いったじゃん……」


あまりに素っ気無い答え。しかし、静雄はそれでも充分すぎるほどの思いだった。先程の発言はアルコールのせいなどではなかったのだ。臨也が泣き出した事で僅かに取り戻された理性が、再び破壊された。


「あっ……」


臨也の男にしては華奢な足首を掴んで抱え上げる。先程静雄が舌で潤したおかげでひくついた後孔に、指を挿し入れてみた。人差し指の第一関節が埋まったあたりで進入が阻まれる。仕方が無いので静雄は先程挿し入れた指を引き抜いて口に含み湿らせた。再度挿入すると狭いながらも多少強引にだが奥まで入れることが出来た。臨也は気持ち悪さに耐えようと顔を顰めている。弓なりに身体をしならせて喘ぐ臨也は童貞の静雄には刺激が強く、静雄の性器は触れてもいないのにもうズボンの下で痛いほどに張り詰めていた。

指が二本に増えても内部である程度指を動かせるようになった頃、静雄は指を引き抜き自分のベルトに手を掛けた。カチャカチャという音がして臨也が振り向くと、大きくそそり立った静雄の性器が目に入った。身体を震わせて硬直する臨也に、静雄は優しく口付ける。呼吸と共に微かに開閉する臨也の秘孔は、時間を掛けて慣らしたにも関わらず慎ましいままで、静雄は心配になると共に自分が今からこの可憐な蕾を無残にも蹂躙するのだと思うと心なしか性器に大量の血流が流れ込んだ気がした。先端を臨也の後孔に押し当てると、静雄の腕の中の身体がびくりと震える。怯えたように見上げる臨也を見て罪悪感は感じても、繋がりたいという欲求には抗えなかった。肩を抱き寄せるようにして腰を推し進める。


「ああ、あ!やっあああああああ!」


いつもの不敵な態度はどこへやら、ただなすがままに揺さぶられている臨也は可愛いかもしれなかった。半分も埋め込んでいないところで一旦腰を止める。臨也は目を見開いて苦しそうに肩で大きく呼吸をしていた。


「大丈夫、か?」


問いかけてみるも臨也に答えられる筈もなく、ただ何とか伝えようと小さく縦に首を振った。大丈夫ではない事くらい明らかだったが、何とか受け入れようとしている臨也に静雄の性器が膨れ上がる。大きくなった事も隙間なく静雄を受け入れている臨也には、嫌というほど分かるために反動できゅう、ときつく静雄自身を締め上げた。静雄はその締め付けに息を詰まらせ、ぎりぎりのところで耐える。このままでは埒が明かないと残りの部分を一気に押し込んだ。


「――――!」


声を出さずに悲鳴を上げた臨也は、息を吸う事も吐く事もできずにシーツを掻き毟っていた。乱雑にしかれたシーツが波打ち、皺を寄せる。一息ついて繋がった部分を見てみると、赤く腫れて若干血が滲んでいる。静雄の暴力にただの一度も屈さなかった臨也が、泣き出すほどだ。きっと相当な痛みだろう。臨也の性器は萎えていて、罪悪感が無いわけではなかったが静雄もいい加減限界だった。


「…っ、動くぞ」


「う、ぁ…ひぐ、ぅ」


臨也の脚を抱えなおして軽く揺さぶると、いかにも苦しげな声が上がる。臨也の血と静雄の性器から流れ出した先走りが水音を立て、歪なハーモニーを奏でた。なるべく早く終わらせてやろうと荒く揺さぶると、奥まったしこりに静雄の性器が掠めたようでびくん、と一際大きく臨也が跳ねる。


「くぁ、や、や!」


音にもならない声で喘ぐ臨也に、熱情が湧き上がる。昔から持っていたようなその感覚に、静雄は漸く何かつかめたような気がした。何かを求めるように臨也を見詰めた。臨也も何か伝えたそうな目で静雄を見ている。どうした、と訊ねるととぎれとぎれに言葉を紡ぐ。


「て、手、はずして、」


そこで漸く臨也の手を拘束したままだという事に気が付いた。慌てて外すと薄く痕になっていて、大丈夫かと訊ねようとすると、――――ふいに臨也の腕が伸ばされた。きゅうと静雄の頭を抱き締めてしずちゃん、と甘い声で囁かれる。静雄は頬が状況を理解すると同時に顔を真っ赤にして、細い腕を外して臨也を見る。臨也は腕を外された事が不満だったのか、若干不満そうな顔をしていたけれどすぐにまた顔を緩ませて、ふにゃりと笑った。


「しずちゃん、すき」


ちゅ、と可愛らしいキスが贈られる。ただ、ただそれだけの事で、


「……っ!」


「ふ、ああ、やああ!」


――――あまりに簡単に達してしまった。抜く暇もなく臨也の中に静雄の迸る熱情が注ぎこまれる。臨也は身体を震わせていたが、結局達する事は出来なかったようで静雄が性器を掴んで上下に扱いて達しさせた。臨也は疲れと眠気があいまって気絶してしまう。静雄は臨也を今すぐにでも問い詰めたかったが無理をさせたのは自分だという事を痛いほど理解していたので、我慢する事にした。

 臨也が目覚めたら絶対に伝えようと心に決めて。







end

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