捧げモノ
□夜道の明かり
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今日は少し遅くなるから
“行ってきます”
袴姿に荷物を持った薫は朝早くに家を出た。
行ってきます。
きっとここに帰ってくるという約束
ただいま。
約束を守ったあかし
ここに来て俺はこの挨拶がどれだけ大切で強いものか解った気がした。
これがあるだけで少し安心できた
もちろん、遅くなればなるほど心配になるけれど
それは押しつぶすほどの重たいものではなく、帰ってきたら何の話をしてやろうか、今日はどんな事があったか、とか考える余裕があるような心配だった。
少し心地いいかもしれないと思えるような。
18時30分
たぶん今頃稽古は終了したはずだ。
風呂を沸かして夕食の準備を開始する。
さっと煮込んだ煮物を火から外し、味をしみ込ませる間、ちらりと外を見ると薄暗くなっていた。
あいにくと今日は曇りなので月の光はほとんど頼りにならない。
今は19時前。
もうすぐ米もたける。
そしたら …。
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