短編

□puzzled 2
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「起ーきーろーーー!!!」

真上からサンジの声がして勢いよく布団を剥がされた。

「あ?もう朝か?」

「そうだよ!もう朝食出来てんぞ、顔洗って着替えたら食べに来いよ!」

そう言ってニヘッと笑うとバタバタと俺の部屋から出て行った。

まるで専業主婦だな。
口に出さないが、サンジの一言一言がよく居る母親のような感じがして、俺は顔を洗いながら吹きだした。

着替えの服を取りに部屋へ戻ると、布団の横にちょこんと綺麗に畳まれた衣服があった。
そういえば、今着ている寝巻きもそこにある服も、全部サンジの物だった。
俺に貸すのは嫌じゃねぇのか?
元の世界ではあいつと俺の貸し借りなんて当たり前のように無かったが…。

服を着てキッチンへ行くと、サンジが待っていた。

「おう、やっと来たか」

「いただきます」

やっぱりこいつの作る料理は美味い。
何処の世界でもこのサンジという人間が作る料理はこんなにも美味いものだろうか。

「美味いか?」

サンジが俺をじっと見て言った。

「当たり前だろ」

そう言うとサンジは嬉しそうに笑って、「たくさん食べろよ」と言った。
元の世界ではこんな会話有り得ないだろうと思い、食べた胡瓜を噛まずに飲み込んでしまった。

「やっぱり、俺はお前を知らなくてお前は俺を知ってるってなんか変だよな」

変じゃねぇよ。そうは言い切れないがこれなら言える、そう思って言い返した。

「今から知れば良いじゃねぇか」

サンジは一瞬俺を見て言った。

「そりゃそうだ」

サンジが笑って、俺も笑った。
こいつが嬉しそうにすると俺も嬉しくなる。
こいつが笑うと、俺も笑う。
向こうのサンジだってそれぐらいの感情表現はするが、一つ違うところがある。
俺以外の前でしかしない事だ。

この世界のサンジと居たいと思うほど、元の世界が遠くなってしまう感じがして。
本当の事を言うと、早く時間が過ぎてほしいと思った。
そうしないと、きっと俺は
目の前に居る惨事に洗脳されてしまうから。

その時サンジが声をあげた。

「あっ!ゾロ!お前、手の甲の数字変わってねぇか?」

そう言われて今日初めて手の甲の数字を見る。
そこには「02」と書いてあった。

「02って書いてあんぞ」

「って事は今日を含めてあと二日、この世界に居られるってことじゃねぇのか?」

確かにサンジの言う通りだ。
昨日此処に来た時は「03」だった。
今日は「02」だ。昨日もこの時間ぐらいに数字を発見した。

「よかったな!!あと2回寝りゃあ、きっと元の世界に帰れるんだぞ!」

「ああ」

サンジの言葉にルフィ達の事を思い出す。
早く、早く戻りたい気持ちもある。
だが、こっちの世界のサンジともう会えなくなるのかと思うと、少し気持ちが揺らぐ。

その時ジンッと数字がある手の甲が痛んだ。

「いって!」

「ど、どうした?!」

手の甲を見るとその数字が焼けたように、「02」の「0」の端の方が擦れて見えなくなっていた。

「なんだこれ…なんか数字が擦れてる」

「お前なんかしたのか?」

「…いや、なにもしてねぇ」

まるで俺の今の気持ちに反対するような、拒むような感じがした。
俺の気持ちが揺らいだからか?
このサンジと居たいって思ったからか?

「まあ、なんともねぇならいいけどよ」

サンジは俺の方を心配そうに見て、それから話題を変えた。

「そうだ!今日、俺はバラティエに行かなきゃならねぇ!ということで、お前も一緒に来てくれねぇか?!」

「任せとけ!」

昨日の会話をコピーしたかのように、俺はサンジに答えた。

「おう!ありがとな!」

そう言ってバラティエに行く準備をした。
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