短編

□Catch.
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※死ネタかどうかはハッキリした描写はありませんが
病ンデレ要素が有りますので苦手な方はご注意を
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知ってるさ

お前が俺を嫌っていることぐらい

俺がお前を嫌いなことぐらい

そうだろ?

俺が狂ったのはお前のせいなんだ

責任ぐらい取れ




お前と俺は、隣同士の家に生まれた。

幼稚園、小学校、中学校、高校も同じだった。

俺達はいつも一緒だった。

性格、外見は全く別だが、周りからはよく兄弟のようだと言われたもんだ。

それまでは兄弟と言われようが言われまいが、お互い嫌いだったんだ。

顔を会わせればすぐ睨み合い、意見が違えばすぐ喧嘩。

ただ、俺達は嫌い合っていたんだ。


何時からだろうか、

俺が狂ってしまったのは。

何時からだろうか、

あいつが俺のモノになればいいと思ったのは。





5月1日ゴールデンウィーク。

俺とサンジは大学へ進学し、今は同じ寮に暮している。

部屋は別々だが休日暇な時は、サンジの部屋に行く。

別にこれと言った用事は無いのだが。

今日も俺はあいつの部屋に行くのだろうな、なんて事を考えながら部屋を出ると、

自然に足があいつの部屋の前で止まるのだ。

そして現在に至る。


「マリモ」

一歩離れた所からサンジの声がした。

「おい」

「……」

「おい、ゾロ」

「…なんだ」

俺はこの頃こいつが俺の名前を呼ぶまで反応しない事にしている。

最近の俺のルールだ。

理由はなんとなく。

サンジが不機嫌な声で言った。

「今日の夕飯だよ、肉じゃがとロールキャベツ、どっちがいい?特別に選ばせてやんよ」

エプロン姿で腕を組んで上から目線で言った。

その姿でさえ、身体に熱が籠ってしまう俺は末期なのだろうか。

「じゃあ、肉じゃが」

「おーけー」

サンジは腕まくりをし、コンロの下の棚から鍋を取り出した。

慣れた手つきでじゃが芋の皮を剥く。

サンジには毎日やっている事だから、頭で考えるより手が先に動いているんだな…と感心してそれを見る。

「おい」

「ん?」

「そんなにじっと見られたら、やりにくいっての」

「そうか」

どうやら目線は下を向いていても、俺の視線に気づいていたらしい。

俺はそう言われて、何もすることが無いからテレビでも付けようかとリモコンに手を伸ばした。

電源を入れ番組表を見るが面白そうなものはやっていなかった。

いや、俺が興味無いだけなのか。

なんとなくニュースでも見ようかと@のボタンを押した。

でも目線はどうしてもサンジの方に行ってしまう。

「…なあ」

「なんだ」

サンジが俺に背を向けたまま言った。

「俺の料理ってさ……美味いか?」

美味いに決まってるだろう。

もし不味くてもお前が作った料理ならなんでも美味い。

少し照れくさそうに言うサンジを見て、からかいたくなったが、

ここは普通に答えようと思い、ごく平凡な返答をした。

「美味いぜ、お前の料理」

「本当か?」

まれに見せるその笑顔、俺はそれが欲しくてたまらなかった。

サンジが嬉しそうな声で言うからもっと褒めたくなって、言わなくていい事まで言ってしまった。

「ああ、俺が食べた中でお前が作った料理が一番美味い…と思う」

「ほんとかよ、なんか惚れ文句みたいだなそれ」

「ああそうだ」

「マリモのくせに気持ち悪…て、今なんて言った…?」

テレビの電源を消した。

プツッと電源が切れる音と同時に俺は立ち上がり、サンジに向き直った。

「惚れてるんだよ」

俺はそう言った。

「……アホかお前、そんな褒めても何も出ねぇぞ」

サンジは頬を赤らめながら包丁を取った。

「褒めてねえよ」

「じゃあなんだよ」

俺はサンジの方へ行き細い手首をつかんだ。

サンジは吃驚した様子で包丁を落とした。

「な、おま、危ねえよ!馬鹿、離せ……」

俺は無理矢理サンジを壁に押し付け、股の間に足を入れ、身動きを取れなくした。

「痛って…何の真似だ?昔みたいにプロレスごっこしようってか」

サンジが怒り気味の口調で言う。

「…もっと楽しい事だ」

「へえ、野郎と慣れ合う趣味はねぇんで辞退させてもらうぜ俺は」

サンジが腕に力を込める。

いくらコイツが喧嘩で強かろうと、剣道部主将の俺に腕力では敵わないだろう。

ここまで接近すると俺の理性もギリギリのところで、

このまま襲ってしまおうか。

「おい…いい加減にしろ…さすがに俺もキレるぜ」

「……」

「あっ!!!コンロ火がヤベぇ!ちょっと離せ!」

サンジが慌て気味の口調で言った。

俺はその言葉に反応して、掴んでいた手首を離してしまった。

その途端、右頬にサンジの平手打ちが襲ってきた。

「いって…なにすんだよ」

「それは俺の台詞だ」

右手が解放されたサンジは俺の胸ぐらを掴んで言った。

「火がヤバイなんてのは嘘だ。それとお前どうしたよ…なんか今日変だぞ」

「ああ」

変だなんて事は十分自覚している。

元々、俺が変になったのはサンジのせいなのだが…

「離せよ」

「うるせぇ、本当、おかしいぞお前」

俺の胸ぐらを掴んだままサンジは浮かない表情をしている。

「そうか、離さないのか」

「理由言えば離してやってもい………」


俺は胸ぐらを掴まれたまま、サンジの唇に自分の唇を押しあてた。

「…っは、何すんだっ!ふざけんな!!!」

「ふざけてねぇ」

必死に抵抗するサンジを押さえつけ後ろ向きにさせ、俺が後ろから抱え込むように押さえつけた。

「離せ!!なんでこんな事するんだよ!」

叫ぶサンジの声など耳には入らず、俺はサンジのTシャツを捲り、

サンジの肌に手を滑らせた。

「…ひっ、やめ…やめろ!!!!!」

サンジが大声を出した瞬間、その場の空気が凍りついたようになった。

サンジの荒い呼吸だけが妙に響くような、そんな空気だ。


俺は無意識のうちにサンジの首に包丁を当てていた。

そう、さっき落とした包丁だ。


自分でも何をやっているか解らなかった。

ただ今触れているモノを手に入れたくて、自分のモノにしたくて、

俺の頭にはそれしか残っていなかった。


そこからはよく覚えていないんだ。

ただ後になって解ったのは


サンジは既に俺のモノになっていた

という事だけ。



END

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