短編

□puzzled
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日差しが熱い、気温も高い。
今は夏か。

どうやらこのグランドラインの夏の気候に入ったらしい。
心地よい風も今となっては、ぬるい熱風でしか感じない。

俺が起きると近くでルフィ達がなんやら騒いでいた。

「あっちーな、ルフィ、風鈴つけるか?」

「なんだ?風鈴て」

「知らねぇのか?こうやって、窓際に付けてだな、風が吹くと…」


―――チリンチリーン


「ほら、良い音するだろ。この音を聞いて夏の暑さを紛らせようっていうな、人間の知恵っつーか」

「へー良い音すんなー。でもあちぃぞ」

ウソップがルフィに説明してるが明らかにルフィは解ってない。
涼しげな音を聞いて暑さから解放されりゃ世話ねぇけどなぁ…。

そんな事を思いながら二人を見ているとキッチンのドアが開いた。

「おーい、野郎共!スイカの差し入れだ、心して食え!」

「うっひょー!サンジありがとう!!!」

出てきたのは片手に切ったスイカを持ったサンジだった。
俺はルフィ達が食べているのを見ていると、

「おめぇは食べねぇのか?」

近くでサンジの声が聞こえた。

「食べるさ、後でな」

「全く、連れねー奴だな」

「そりゃどーも」

サンジが向こうへ行くと同時に「マリモ」と声が聞こえた。

「クソコック」

「ああ?お前の頭見てたらスイカ生えてきそうなくらい緑色してたんでな」

「んだと、この野郎!!!」


「あんたたち止めなさい!!!!」

暑苦しい中で暑苦しい喧嘩やられちゃたまらん。とナミのゲンコツが降ってきた。

「スミマセン、んナミさん」

「それより!」

「いってー…それより、なんだよ」

「さっきから波の様子が変なの!気候も変わったわけじゃないし、変な海流にも乗せられたわけじゃないのに…」

そういえば、波の流れが急に変ったような気がする。
それも波が一点に集まっているような…。
その時ナミが声をあげた。

「皆!!大変よ!帆を張って!!」

「どうした?」

何も感じてないルフィ達がスイカを頬張りながら言う。

「大渦よ!!このままじゃ大渦に巻き込まれるわ!!」

ナミがそう言った瞬間、船がガクンと揺れた。
どうやら大渦の海流に掴まったらしい。
ナミの叫び声と同時にルフィの体と俺の体が海へ投げ出された。

「ルフィ!!ゾロ!!」

チョッパー、ウソップが手を伸ばすが届かず、ロビンの能力を使っても俺達には届かなかった。

「ナミ!もっと船をルフィ達の方へ!!!」

波がうつむいた表情で言った。

「これ以上は危険よ…船ごと大渦へ飲み込まれるわ!」

「じゃあ、どうしたら…」

船が遠ざかっていく中、俺は必死にルフィの体を抑え、
精一杯の力でルフィを船の方へ投げ飛ばした。

どうやら、船の近くにルフィは落ちて船のロープで引き上げられていた。
ルフィが助かったようで安心した俺は、さっきの投げ飛ばした時に力を使ったせいか、海流のせいか、うまく身体が動かない。
大渦はそこまで迫っている。

一方、船の方では

「ルフィは助かったけど、まだゾロが!!」

「どうしよう!もうあんなに遠くまで…」

チョッパーが青ざめた表情で言った。
ルフィはゲホゲホと噎せていて、能力は今使えそうにない。

「ゾロ!!!!!!!」

ウソップは叫ぶがどうにもならず。
ナミは汗を流しながらうろたえ、ロビンも冷や汗を流し、絶体絶命の状態だ。
その時一人の男が飛び出そうとしていた。

「…サンジ君!!」

「あの野郎…手間かけさせやがって」

口調とは別に、サンジも冷や汗を流し呼吸も十分ではないようだ。



ルフィは助かったか…よかった。
俺は体は動かないがなんとか溺れずに済んでいる。

くっそ…このまま死ぬ訳にはいかねぇ…。
必死にもがくが、身体が言う事を聞かず。
大渦はブラックホールのように俺の後ろに渦巻いていた。

すると船の方から声が聞こえた。

「駄目よサンジ君!!!あなたも渦に飲み込まれるわ!!」

「サンジ!無理だ!この状況で!ルフィも今ダウンしてるし…」

「じゃあ、誰があいつを助けろってんだ!」

船には靴を脱いで今にも海へ飛び込みそうなサンジが居た。

あいつ…死ぬ気か?!!

「来るな!!!!!!!!!」

目の前の光景を理解した俺は咄嗟に大声を出していた。
それに気付いたサンジは俺の方を向いて

「絶対助けるからな!!!!!」

そう聞こえた、ような気がした。
俺は真っ黒い渦の中に引きずり込まれていった。
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