短編

□Reason
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「ただいま」


鍵を閉めてきたはずなのに開いていた。
普通、鍵が開いていたら不審に思うが俺は思わなかった。

誰がこの部屋に居るか分かる。
きっとアイツだ。このボロアパートの―――


「おう、おかえり」


ほら、やっぱり居た。

緑の髪に3本のピアスすぐ分かる。

俺が住んでるアパートの大家だ。
このボロアパートは4つ貸家があるんだが、
今は俺と、隣の部屋の長っ鼻しか住んでない。
家賃が安いって事で住んでるが、俺は大学生なんで
これくらいの1LDKの部屋が最適かなあと思った。

でもなんでコイツが大家なのかが分からない。

名前はロロノア・ゾロと言うらしい。
歳は20代前半てところだろうか…
俺とそれほど変わらない背丈だ。

だが、問題はコレだ。
何故俺の部屋に毎回来るんだ?


「おう、じゃねえよ。なんでお前は毎回毎回…」
「酒あるかー?」
「俺は未成年だ!クソ野郎」


部屋に来てはいつもダラダラしたり酒飲んだり、菓子食ったり。
この頃は俺の手料理まで食っている。

大家も一人暮らしらしいが、生活が苦しい家庭とは思えない。


「じゃ、なんか作れ」
「なんで俺がお前のために作らなきゃいけねーんだ」
「お前の料理美味いから」
「…ッ」


俺の料理が美味いから毎回来てるって訳か?
いや、違うな…

そこに鞄と荷物を置いてゾロの反対側のいすに座り、
思い切ってその理由聞いてみることにした。


「おい、」
「なんだ?」
「お前ってさ、なんで毎回うちに来るんだ?自分の家があんだろ」
「…………暇?だからか?」
「なんだよ、その間と疑問形は」

どうやら真剣に答える気は無いらしい。
別に凄く知りたいってわけでも無いけど…


「迷惑か?」
「いや、別に迷惑ってわけで聞いたんじゃねぇけど…」
「俺が来る理由、知りたいか?」
「いや、別に知りたいってわけじゃ…あー教えてくれるんなら知りたいな」
「じゃ、教えねー」
「なんだよ期待させといて!」


ゾロは笑って「飯食いてー」と言った。
俺はコイツの笑った顔が嫌いじゃない。
どっちかと言うと好き…なほうなのか…?

毎回来るせいか、こんな他愛無い会話も俺の日常の一部になってきた。

最初のころは迷惑だとか思っていたが、話してみれば悪い奴じゃなさそうだし、
話してても結構楽しい。それと落ち着く。


「なあ、サンジ」
「…なんだよ」


ゾロが滅多に呼ばない俺の名前を呼んだから少し驚いた。


「隣に住んでる長っ鼻は友達か?」
「あ?まあ、そんなとこだ同じ大学の後輩だ」
「ふーん」
「なんか気になるのか?」 「別に…」


俺の個人情報でも聞きたいのか?
それとも隣の鼻が気になるのか?


「じゃ、お前が時々一緒に帰ってくる麦わら被った奴は?」
「ああ、ルフィか。アイツも大学の後輩だ」
「へー」


全くなにが言いたいんだコイツは。
よく分からねえ。
すると窓の方を向いてこう言った。


「お前、好きなやつとか居んのか?」

「なっ、なんだよイキナリ」


イキナリ過ぎて、リンゴの皮を剥いていた包丁を落としそうになった。

なんでそんな事聞くんだよ。
俺はそれを言いたかったが、ゾロの言葉で遮られた。
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