短編

□当たり屋に遭った場合の対処法〜これでもう当たり屋なんてくない〜
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鈴の場合

「クソっ!なんだったんだ今の奴は」

声を荒げる男を他の二人が同調する。

「髪が赤いだけのことありますね」

「あの長髪、ちゃんと手入れしてましたね」

「髪関係ねぇ!!」

男が言った直後、またしても足音
が響く。

足音の方向に目を向けると、歩きスマホの人物が向かってきた。

「ふっ、今度こそ決めてやる」

ニヤリと笑むと、他の二人を引き連れて近づく。

ドンッ

またしても派手にぶつかり、よろけてみせる。

「痛てえ!痛てえよぉぉぉ!!」

痛がる男にかけよる二人。

「大丈夫ですか!」

「歩きスマホめ・・・なんて危険なんだ!」

だが、抗議の声もなんのその、無情に男達を見ているだけだ。

「こりゃあ、骨折れちまったな!テメェ、治療費出しやがれ!」

「・・・・・・」

スマホからチラリと視線を移し、無言のままだ。

「聞いてんのかコラ!・・・あっ痛い!痛い痛い!!」

怒鳴る男のぶつかった方の腕を掴み、ギリギリと握りしめているのだ。 

「ふーん、痛いんだ。これくらい?もっと痛い?」

握る力を強め、男の腕が悲鳴を上げる。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いから!本当に治療費ふんだくるぞテメェ!」

「それだけ元気あれば大したこと無いな」

そう言うと更に力を強める。

「ギャー!」

「おい!やめろよ!」

「本当に痛そうじゃないか!」

どうやら、本当に腕が折れそうな男を見かねて、当たり屋だと認める発言をしつつ、ようやく二人が止めに入る。

「歩きスマホは危ないんだぞ!」

「事故が多発しているのを知らないのか!」

「お前ら!歩きスマホより、俺への暴行をまず止めろよ!!」

怒るポイントが大幅にズレている二人に男も気が気じゃない。

「む、そこ攻められたら言い返せないな」

呟やくと、パッと手を離す。

「ならば見ないで操作すれば問題無いだろう」

言うと、スマホを手に胸の位置まで腕を上げているが、顔は正面を向いて、進んでいった。

指ははしっかりと画面をなぞっている。
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