短編

□美時が詐欺に遇ったら
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「くくく・・・まんまと引っかかりましたね、アニキ」


「あぁ、ホント馬鹿なヤツ」

パタン

ケータイを閉じ、アニキと呼ばれた男が振り向く。

「医師役にお前を用意する必要も無かったな」

「全くですね」

笑い声を抑えて言う。

「直接持ってこられるのは想定外だったが・・・まぁいい」

辺りを見回し、呟いた。

「郵便局前をバカっぽいのが通れば気付くだろう」

「・・・」

「どうした?」

「あの・・・アニキ?その、何でメザシ帽なんて被ってるんすか?」

「あぁ?顔ばれたら終わりだぞ。ほら、おまえの分もあるから被れよ」

「・・・・・・・・・」










「はーん、それで飛び出していったわけか」

隣で電話していた坂木の様子や返答を聞いていた今成から、その内容を聞いた雅は納得した。

「まさか、引っかかるわけがねぇと思ったのが甘かったぜ・・・」

今成はとても悔しそうだ。

「火双?」

「こんなことなら・・・俺・・・俺・・・」

肩を震わせ、顔がうつむいている今成に、雅は困惑する。

「どうしたんだよ火双?」

心配そうに覗き込もうとする雅だが、突如、今成はバッと顔を上げた。

「クソッ!こんなことなら俺も美時に「オレオレ」って電話すれば良かった!」

「なんの後悔してんだ!!お前!」

ガチャッ

ドアが開くとホスト風の教師が現れた。

「あれ、どうしたの?2人して神妙な顔しちゃって」

「げっ、天川・・・」

部屋に入ってくる天川にあからさまな態度だ。

「ちょっと雅、何その嫌な物を見る目やめてよ」

「雅ちゃん、いくら夜崎でも、父親のパンツを見る思春期の娘のような眼差しはヒドいぞ」

「んな目してねーよ!」

「そういう火双も、変な例えはやめようね」

「チッ!」

「ドアの前で話は聞かせてもらったよ」

「盗聴とは趣味悪いぜ天川」

「嫌だな、そんな怖い目で睨まないでよ雅」

(睨んだつもりは無かったが・・・)

「おかげで、さっきの事情も分かったからね」

「さっき、って何だよ夜崎」

「それが、職員室で美時が僕の机の前でね・・・」
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