小説
□18才になっても、入らないで
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「・・・・・・」
雅の口から、「ぁ、あっ・・・」と小さく呻くような声は、言葉が出ないほどの衝撃を少しずつ、外に溢しているかのように見えた。
一方鈴は、ボタンを連打していた指を止め、微動だにしないどころか、1ミリも動かせないのではないかと思うほど、顔の表情筋を凍らせている。
「・・・・・・」
一瞬、時が止まったように思えたのだ。雅と鈴にとっては。
「おい、何だよその反応」
2人の反応にきょとんとして、何も分かっていない火双は、自分の発言がどれ程の影響を与えたのか知る余地もない。
多少、バカだと思うだろうが、思春期の年頃を迎えた男子としては、気になっても可笑しくない。
それを、この2人は何をそんなに固まる必要があるのだろうか?通常なら首を捻るのも頷ける。通常なら。
「そうだよ、別におかしくないでしょー」
火双に加勢する美時も、同じように考えたのだろう。ただ、考えた内容は思春期どうこうというものでは、なさそうだ。
「だって、いつも行くのに入れないなんて気になるじゃん!僕、あのレンタル店に週6で通ってるんだよ」
週に何度通おうがいいが、問題はそこではない。
「そーだそーだ!他の奴は・・・・周り気にしながらだけどよ、あの暖簾潜っているのに、俺らが入れないのなんて可笑しい!」
別に可笑しくはない。年齢基準に引っ掛かっているだけだからな。
この場を納めるためには、単にその事を伝えれば一発OKなのだが、それでは意味がない。
そのせいで、お子様コンビが誕生日を迎えたと同時に、暖簾の中へ踏み込む事を保護者コンビが恐れているのは分かった。
なので、余計な口は出さずに、文庫本を広げて、会話に耳を傾けていた。
ここで、ようやく2人が我に返ったようだ。
ハッした雅がキツめの口調で、却下した。
「バカ野郎!お前らに18禁の世界なんて早すぎる」
ーどのレンタルビデオ店も、奥まった場所にあるだろう18才以下禁制のコーナーに行きたいと言い出したのだ。
色事に関して幼児並みの知識しか持たない2人が何を考えているか知らないが・・・・・・いや、何も考えていないだろうが、保護者達がこれを許すわけがない。
いや、いっそのこと入れてしまってはどうだろうか?
過度のショック療法で、一気に今時の男子へと変貌を遂げるかもしれない。