短編

□リレー
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「おい鈴、何読んでるんだ?」

ケータイを上着のポケットしまい、開いた本に夢中になっている。
鈴がケータイ以外に熱心な眼差しを向けるなんて珍しい。

「新作をチェックしていたところだ」

肩越しに覗き込んでいる雅に見えやすいように体をずらしてみせた。
内容を確認すると、最新ケータイのカタログだ。

「お前はケータイ以外の事を考えないのか」

何故カタログがあるのか深くは考えないようにした。雅の呆れたような呟きは独り言だと捉えられたらようで、無言でカタログを再度読み始めた。

他の連中はどうしたものかと視線を巡らせると、本棚ではなく、カウンターの近くに配置された机の上に並んだ、ポップ付きで紹介されている本の一冊を手にしている人物に気付く。

「鏨、何読んでるんだ?」

真剣な面もちでページを捲る姿は、鏨にしては珍しく鬼気迫っているものを感じた。

「雅先輩っ!?」

余程集中していたのか、雅の呼びかけに数秒ほど経ってから顔を上げて驚いた顔をしている。

「・・・何だ?その本」

鏨の持つ本の表紙を見ると、“活躍出来る主人公になるための10ヶ条!”とでかでか書かれている。

「いやっ、この、それは・・・僕も活躍したいなぁ・・・と」

最後の方が小声でよく聞き取れなかったが、あまりに恥ずかしげな様子に、これ以上の追求はやめとこうとカウンターに目を向ける・・・が、

「アイツ等どこ行った?」

カウンターにいるはずの火双と美時が見当たらない。

もともと図書室に用があったのは図書当番の2人で、いつも一緒にいる鈴と、たまたま昼食を一緒に食べる約束をしていた雅が食事後に付き合って来たのだ。

そして偶然、別件で来ていた鏨に会った。

つい先ほどまで火双は歴史漫画、美時はライトノベルを読んでいたのだが、どこにもいない。
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