短編

□美時が詐欺に遇ったら
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その日は確かに平和だった。



1本の電話が来るまでは…


♪〜♪〜♪

「おい、この曲美時だろ。さっさと出ろよ」

アニメ曲の着信に即座に反応したのは雅だ。某テニスの王子様で流れているメロディは坂木の物だと既に一同は認識している。

「あー、僕のだったか」

ピッ

「もしもしー?」

『もしもし、俺だよ。俺俺!』

聞き慣れぬ声に「ん?」と聞き返す。

「誰ー?」

『俺だよ、俺俺!』

「俺って言われても・・・あっ!もしかして火双?」

『そうだ!火双だ!』

「どうしたのさ、そんなに焦っちゃって」

『実は、さっき妊婦を轢いちまってさ、今すぐ手術しないといけねーんだ!だから悪いが金振り込んでくれよ』

「えー!火双、車の免許持ってたっけ?」


坂木の疑問に、音にはならなかったが、電話の向こうから“ギクリ”と効果音が聞こえた気がした。

『何言ってんだよ、自転車に決まってるだろ』

だが、直ぐに言い返してきた内容に「あー、そっかー」と納得する。

「いくら必要なのさ?」

『・・・100万だ』

「!100万・・・」

あまりの額に沈黙が続いた。

『頼む!払ってくれないと俺、牢屋にブチ込まれちまうんだ!』

「うーん・・・わかった。夜崎さんの引き出しからくすねて借りてくるよ」

『恩に着るぜ!』

「それじゃ、今から届けにいくよ」

『いや、悪いが振り込みにしてくれ。口座番号は・・・』

「それじゃ、郵便局の近くで待ってて!」

『お、おい!』

ツーッツー

制止の声も聞かずに電話を切ると、バックを持ち駆け出す。

「ちょっと出かける!」

「あぁ?どこに?ってか何しに?」

言うと、坂木のいた隣から、ケータイで動画を見ていた火双から問いかけが帰ってきた。

「火双が大変だから、助けてくる!」

「いや、火双は俺だけど」

「それじゃ、行ってくるね!」

「おいコラ、聞けよ!!」

坂木は、忙しない様子で返事だけすると、勢いよく出て行ってしまった。

「美時のヤツ、何だって?」

前に座る雅が聞いてくる。

「・・・俺を助けてくるらしい」

「・・・・・・・・・・・・はぁ!?」
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